日本の商社等が開発輸入したLNGの37%(2023年度)が、国内で消費されず海外に転売。最大の転売先は中国。国際協力銀行(JBIC)の公的資金約9兆円を投入。環境NGOの調査で判明(RIEF)
2025-11-06 01:51:50
(写真は、日本資本による開発輸入で設置されたLNG事業サイト=FoE Japanの報告書から引用)
日本の商社等が開発・輸入した海外産のLNG全体の37%(2023年度)が国内で消費されずに、海外に転売されていることが5日、環境NGOの調査で判明した。転売量は同年のLNGの最大の輸入先のオーストラリアからの輸入量を上回る。さらに2020~2024年での最大のLNG転売先は中国で、日本国内のガス需要の約2割超に相当するという。日本政府は、米国からロシアのウクライナ侵攻への追加制裁としてロシア産のエネルギー輸入の停止を要請されているが、停止すると国内消費のLNG不足に陥ると難色を示している。だが、LNG輸入量の多くを中国等に転売している状況下では、説得力を欠く「言い訳」でしかない。
商社を軸とした輸入LNGの転売ビジネスは、エネルギー業界ではすでに知られてきた。今回、環境NGOのFoE Japanが、独立研究機関Datadeskに調査を委託して、原油、ガス、コンテナなどのコモディティ(商品)や海運に関するデータと分析の専門企業Kplerの航行・契約データを統合して分析した。分析に際しては、日本企業が関与した全LNGカーゴを長期契約/スポット別に分類、合計32社の2020~2024年の転売フローを定量化し、主要転売先国や転売量など日本のLNG転売の全貌を明らかにした、としている。
さらに調査では、これらのLNGの開発・輸入には、経済産業省が主導する「エネルギー安全保障」政策の名の下で、公的金融機関の国際協力銀行(JBIC)が多額の公的資金を投入して開発した事業が多く含まれることも明らかになった。今回の調査によると、1999年から2024年の合計で840億㌦(2014年の平均為替レート、1㌦=106.85円で算定すると約8兆9,754億円、現在のレート1㌦=154.31円では約13兆円)が投じられたことになる。

しかし、報告書では「JBICが資金提供してきた事業から出荷されるLNGの多くが日本に輸入されず海外に転売されてきた」と指摘。2023年度の輸入分では日本企業が取り扱った総量の37%が国内で消費されずに海外へ転売されたとしている。この転売量は同年の日本のLNG輸入量で最大の41%を占めたオーストラリアからの輸入量を上回っている。さらに、2020~2024年における最大のLNG転売先は中国であり、同5年間で約1458万㌧が中国に転売されたとしている。
FoEの調査では、JBICが公的資金支援したLNG事業でも、開発した日本企業が取り扱うLNGの多くが第三国に転売されていることが判明したとしている。例えば米国のキャメロンLNG事業はJBICが約2671億円(融資契約が締結された2014年の平均為替レートの1㌦=106.85円)を融資し建設されたが、同事業から日本企業が取り扱ったLNGの64.5%(2020~2024年)は日本に輸出されず、第三国に転売されていた。
米国で開発したLNG事業の他、オーストラリアやインドネシアでJBICが支援した事業においても、相当量のLNGが第三国に転売されている、と指摘している。これらの事業の一部では現在、設備の拡張が提案されており、JBICが新たに融資をする可能性もあるとされている。この点でFoEは「これら既設の事業では、すでに相当量のLNGを日本で消費せず転売している以上、新規のLNG事業や拡張事業を公的資金で支援する必要性が無いのは明らか」と指摘している。
国際コモディティでもあるLNGを中国に売却すること自体は、正当な市場価格に基づくならば、問題はないともいえる。だが、JBICの公的資金を活用して開発したLNGを商社が転売してきたのであれば、開発資金の返還あるいは売却資金からの返済額の確保等の措置も考えられる。また中国に対して厳しい政策をとるとされる高市政権にとって、日本の公的資金で中国へのLNG転売を支えるエネルギー開発構造を、座して承認し続けることができるのかという政治的判断も問われそうだ。
ロシアで三井物産と三菱商事が参画して開発輸入しているサハリン2のLNGについては、対ロシア追加制裁としてのエネルギー輸入停止措置の一つとして、米国から輸入停止を求められている。ウクライナ侵攻を停止させるという国際連携の対ロ安全保障上の要請だ。だが、日本政府は「国内でLNG不足に陥る」との経産省の言い分でサハリン2のLNG輸入停止を否定している。
第7次エネルギー基本計画で日本政府は、緊急時のLNG安定供給確保のためとして、転売、すなわち日本企業の「外・外取引」を含む「LNG取扱量1億㌧の目標を維持」と明記している。JBICの公的資金による支援がこの政策を資金面で支えており、実際に日本の企業が取引したLNGの全体量のうち、75%は日本の公的資金が関与している輸出ターミナルから供給されている。
2016年以降、JBICは世界15カ国で26カ所で化石燃料ガス事業に資金供与を実施しているが、その中には日本への輸出を想定したLNGターミナルのみならず、フィリピンでの輸入ターミナルやインドネシアでのガス火力発電所など、日本国内のLNG供給に直接寄与しない事業も含まれている。
しかしFoEの調査では、JBICが資金支援したすべての化石燃料事業(他国での事業を含む)による温室効果ガス(GHG)排出量は、2023年だけでも、CO2換算17億㌧で日本全体の排出量を上回り、日本とカナダの排出量の合計にも匹敵する規模となっている。さらに、JBICが支援する海外でのLNG事業の建設・稼働に伴う人権侵害、健康被害、生物多様性・環境破壊、先住民族の権利侵害、そして現地住民の生計手段への影響等の環境・社会面での深刻な被害報告がNGOには届いているとしている。
FoEでは「転売されるLNGの開発支援に充てられる一部の日本の公的資金は、転売されるだけのLNGのために、各国に化石燃料事業を押し付け、気候変動を悪化させ、深刻な人権問題を引き起こすことに使われていることにる」と指摘している。JBIC等の公的金融機関の資金は、最終的には日本の国民の税金で支えられるものともいえる。経産省が長年主導してきた開発輸入の商社、輸送する海運会社、消費する電力・ガス会社の連携構造の「歪(いびつ)さ」を是正する必要性がある。
(藤井良広)
https://foejapan.org/issue/20251105/26513/
https://foejapan.org/issue/20251105/25538/
https://foejapan.org/wpcms/wp-content/uploads/2025/11/FoE.LNG-Trade.JP_.pdf

































Research Institute for Environmental Finance