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「無利子の奨学金貸与」も 貸金業と同様の扱い!?公益法人協会が金融庁に貸金業法改正の“不備”を指摘(FGW)

2011-12-15 21:12:10

公益財団法人、公益法人協会は金融庁に対して、貸金業法改正に伴う学生向け奨学金事業の取り扱いの例外措置を求める要望を出した。現行の改正法だと、学生に対する無利子の奨学金事業を行っている公益法人が、公益法人改革で一般法人に移行した際に、消費者金融業者などと同列の扱いを受け、貸金業法の登録・届け出、貸金業務取扱主任者の設置等のコスト負担、事務負担を強いられるとしている。

 財団法人や社団法人などの公益法人(特例民法法人)は現在、政府が進める公益法人制度改革に基づいて、5年間の移行期間に、新規の公益法人あるいは、一般法人への移行を義務付けられている。このうち、生活困窮家庭の子弟等を対象として無利子の奨学金貸与事業を実施してきた法人についても、同様の措置がとられている。これらの法人の中で、育英事業の原資が不動産等の運用に基づく収益である場合は、公益法人の規制比率をクリアできないため、一般事業法人への移行の道しかない。

 金融庁が所管する貸金業法では、消費者金融業などの貸金業者による過剰貸出や法の趣旨を逸脱した取り立て等を防ぐため、改正法によって、登録・届け出の義務付け、各種報告書の作成・提出、貸金業務取扱主任者の設置等の事務、費用負担を求めている。これらの法規制の網は、国や自治体が実施する生活保護のための貸し付け等は除外扱いするが、それ以外は公益社団法人や公益財団法人による貸付も、収益を目的としていない場合以外は、適用除外にはならない。

従来ならば、公益法人ということで、収益性はないと認定されていたが、今回の公益法人改革で、一般法人移行を余儀なくされる法人の場合は、業務自体は従来通りの奨学金事業を何ら変更しなくても、貸金業者としての取り扱いを受けてしまうという問題が生じている。公益法人協会は、奨学金の借入対象の学生が、奨学金を受けたからといって、多重債務者になるわけではないうえに、貸付金は原則無利息で、過重な利息負担を生じさせるものではない、などとして、一般法人移行後も従来と同様に、貸金業法の対象外に置くよう、求めている。

 改正貸金業法の一律適用は、地域の資金を地域内の個人やNPO等の活動に回すNPOバンクなどにも及び、善意の活動に影響を与えている。改正貸金業法は多重債務者を救済するとともに、新たな多重債務者を生みださないよう、貸金業者を厳しい監視下に置く趣旨が盛り込まれているが、結果的に、社会性を重視した市民や善意の資金提供活動に支障をきたす運用となっている。

 これでは、金融行政があまりに「杓子定規」に偏していると、批判されても仕方がないのではないか。金融庁の官僚は、多重債務者問題を近視眼的に扱うだけではなく、市民の資金を社会に広く活かすことで多重債務問題を未然に防ぐ視点に立つべきだろう。「金融庁、もう一歩前に前進!」ということでないか。

http://www.kohokyo.or.jp/kohokyo-weblog/topics/docs/20111215youbou.pdf