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環境NGOのWWFが援助するアジア・アフリカでの密猟監視レンジャーらが、地元住民に暴力。死亡事例も。米ネットジャーナリズムのBuzzFeedが指摘(各紙)

2019-03-06 22:24:09

WWF2キャプチャ

 

 環境保全活動を世界的に展開するNGOのWWFがアジア、アフリカで支援する密猟監視のための自然保護レンジャーらが、密猟などの疑いをかけた地元の住民に暴行を加え、死に至らしめたケースが複数あることが、調査報道で知られる米ネット・ジャーナリズムの「BuzzFeed News」によって報道された。

 

 BuzzFeed Japanによると、WWF(世界自然保護基金)は各国のレンジャーを、自然保護と密猟の取り締まりのため支援してきた。アジア、アフリカ等での密猟市場は10億㌦規模で、市場価値のある動物を根こそぎ狩猟するので、一部の種の生存が危うくなるケースもある。

 

 各国による密漁取り締まり自体も、武装密猟者から攻撃されることもあり、WWFの2018年の推計では年間、世界中で約50人のレンジャーが殺害されているという。今回のBuzzFeedの報道は、レンジャー側が密漁者対策の行き過ぎで、「地域住民への暴力を見過ごしてきた可能性が浮上している」(BussFeed)と指摘している。

 

WWFの保護活動を表記した現地での看板
WWFの保護活動を表記した現地での看板

 

 武装密漁者との闘いのため、レンジャー側も武装化が進んでいる。BuzzFeedは、こうしたWWF支援のレンジャーの武装化を「WWF’S Secret War」と呼んでいる。

 

 BuzzFeedは約1年、6カ国にわたり、100人以上へのインタビューと、数千ページに及ぶ機密文書、予算報告書、メールなどを調査した。その結果、WWFが一般市民への暴行を繰り返すレンジャーに、資金や物資を提供していることが明らかになった、としている。

 

 たとえば、2006年、WWFが保護活動のため資金援助しているネパールのチトワン国立公園で、ある地元男性が密猟されたサイの角を裏庭に隠していると疑った公園のレンジャーが、男性を拷問した。結局庭から角は発見されなかったものの、男性はそのまま拘留され、9日後に死亡した。



 男性が拘留されていた拘置施設では、男性への水責めや、殴る蹴るといった暴行が、地元住民によって目撃されている。だが公園当局の発表では、男性の死亡は「ベンチから落ちたため」とされた。その後、別の男性も拘留中に死亡。遺族はレンジャーによる暴行を訴えたが、公園側は、「男性は自殺した」と発表した。関係したレンジャーらはネパールの公務員であり、WWFの現地事務所はその後も資金援助を続けているという。

 
チトワン国立公園周辺の住民ら
Tsering Dolker Gurung / Via BuzzFeed News

チトワン国立公園周辺の住民ら

 


 もう一つの事例は、2014年にインド・カジランガ国立公園で起きた。WWFが支援する同公園の最高責任者が極めて強硬な密猟対策を政府に提示し、ネパールと同じように密猟者を逮捕し拘禁する包括的権限を求めた。同要請は、これまで必要とされてきた手続きを踏まずに、侵入者を攻撃できる内容だが、WWFはこれを承認した、としている。

 

 WWFはインドでも長年にわたりレンジャーに数百本の警棒と暴動鎮圧用ヘルメット、警備用の暗視スコープを提供している、と財務資料が示している。

 2017年には、アフリカのカメルーンのロべケ国立公園で、WWFの支援を受けたレンジャーが11歳の男の子を両親の目の前で暴行した。両親は現地のWWFに抗議したが、返答は無かった、という。同区域では他にも、レンジャーによる「なた」や銃を用いた暴行、住居やキャンプの破壊行為による被害も出ている。

 

WWF4キャプチャ

 

 現地事務所のスタッフは、これら残虐行為が起きた場合、スイスの本部に報告することになっているが、WWFの現地スタッフはレンジャーの仕事と深く関わっていることが多く、彼らの悪行には目をつぶっているという。

 

 しかし、BuzzFeedの調査では、ロベケ国立公園の予算報告書から、WWFと政府軍が密接に連携していることが伺える情報が見つかったとしている。具体的には、WWFが政府軍メンバーのための訓練や彼らの住宅、テレビや船にまで資金を提供しているという。それらの資金には、動物保護をWWFに託して、一般の個人等からの寄付金も入っている。

 

 カメルーンでは、権威主義的な大統領ポール・ビヤのもとで、WWFが保護する公園の周辺住民、特に先住民族に対して、支援するレンジャーが暴行や拷問をしているとして、以前から非難の声が上がってきた。これに対して、カメルーン政府のキンビ報道官は「人権侵害は存在しない」「密猟を防ぐための措置ならば、いかなる場合も重大な人権侵害にはならない」と語った。



 中央アフリカでは、メールや機密文書の調査から、WWFスタッフが、軍からの攻撃用ライフルの購入に関与した可能性が浮上している。

BuzzFeed Newsが入手したロベケ国立公園の予算報告書
 BuzzFeed News / Via img.buzzfeed.com*&output-format=auto&output-quality=auto BuzzFeed Newsが入手したロベケ国立公園の予算報告書
 

 今回の報道を受け、WWFは4日、声明を出した。その内容は、「WWFの活動の中心は、生活している人々とともにある。人権尊重は我々のミッションの中核だ。指摘された問題を真剣に受け止め、独立した機関に調査を依頼している。BuzzFeedには調査を強化するため、すべての証拠を共有することを求めたい」

 

「WWFの活動は、深いコミュニティの支援に基づいている。われわれ自身とわれわれのパートナーの両方が活動地域での先住民や地域コミュニティの権利や生活の維持を確保するよう配慮した厳格な政策を持っている。これ等の政策を逸脱する行為は一切認められないし、調査で明確にされねばならず、迅速な行動をとる」というものだ。

 

  この声明で、WWFは、第三者機関による独立調査を実施する方針を明らかにしている。だが、BuzzFeedは、「WWFがレンジャーと人権侵害の問題を調査するのは、これが初めてではなく、2015年にも外部の専門家による内部調査を実施しながら、その成果は顧みられないままになっている」と指摘している。

 

 同報告書は先住民の人権問題に詳しい活動家がまとめ、同年4月にWWF本部に提出された。数々の暴行事件については、「WWFにも責任がある」とし「早急に対応すべき」と警告している。

 

 しかし、WWFインターナショナル事務局長のマルコ・ランベルティーニ氏は、カメルーンで起きた人権侵害は「カメルーン政府の問題だ」としている。当時、報告書をまとめた人権活動家ディエル・ムウェンゲ氏はBuzzFeed Newsnに対して、「報告書がWWFの責任を明記したから無視された」と語ったことを紹介している。WWFは今も、ロベケ国立公園のレンジャーに支援を続けている。 ãƒ­ãƒ™ã‚±å›½ç«‹å…¬åœ’の近くにあるマンベレ村

Tom Warren / Via BuzzFeed News ロベケ国立公園の近くにあるマンベレ村
 

 2018年、ドイツの政府系開発銀行が研究チームをロベケ国立公園に派遣した。同年11月にベルリンで行われた会議で研究者らが発表した内容は、内部調査の報告書に記載された内容を裏付けるものだった、という。

 研究者らによると地元住民とレンジャーの間には「恐怖と疑念」が蔓延しており、彼らが訪れた「ほぼ全てのコミュニティでレンジャー達による暴力」が報告されたとしている。

https://www.buzzfeednews.com/article/tomwarren/wwf-world-wide-fund-nature-parks-torture-death

http://wwf.panda.org/?uNewsID=343750