HOME |2019年の世界の電力部門からのCO2排出量、前年比2%減。過去30年で最大の減少。石炭火力発電量も3%減と大幅減少。日本は世界第4位の石炭火力発電国。民間レポートが調査分析(RIEF) |

2019年の世界の電力部門からのCO2排出量、前年比2%減。過去30年で最大の減少。石炭火力発電量も3%減と大幅減少。日本は世界第4位の石炭火力発電国。民間レポートが調査分析(RIEF)

2020-03-10 17:25:29

ember5キャプチャ

 

  2019年のグローバルな電力システムからのCO2排出量が前年比2%減と、過去30年間で最大の減少率を記録した。多くの国々で石炭火力発電所の発電を縮小する動きが現実化してきたためで、石炭火力による発電量は3%減と大きく減った。特に欧米の石炭火力発電量の下落率は二ケタ台となった。一方、中国は逆に2%増で世界の石炭火力の5割を占めた。日本の石炭火力発電量は4%減だが、依然、世界第4位の石炭火力発電国の座を維持している。

 

 気候シンクタンクの「Ember(旧名Sandbag)」が最新レポートで報告した。世界224カ国の発電源別の2000年から2019年までのデータを分析した。 データのカバー率は世界全体の85%。残り15%は推計に基づく。同様の分析は英BPや国際エネルギー機関(IEA)も実施しているが、BPは4カ月遅れ、IEAは1~2年遅れとなる。

 

電力部門からのCO2排出量の推移
2019年のグローバルな電力各部門の発電量の変化

 

 2019年の最大の特徴は、石炭火力発電からの電力量が前年比3%減と大きく減ったことで、発電部門全体からのCO2排出量が同2%減となった点だ。どちらも1990年以来、もっとも減少率が大きかった。特にEUでの石炭火力発電は24%減、米国16%減と、ともに大きく減らした。2007年以来の石炭火力の削減率では、米国が19%~32%減、EUは43%減と、いずれも着実に減少している。

 

 国別の石炭火力発電量では、2%増の中国が世界全体の半分を占める50.2%(発電量4560TMh)で断トツの1位。次いでインド(11.0%、999TWh)、米国(10.6%、966TWh)、日本(3.1%、285TWh)の順。日本は前年より4%減だが、2019年中に1.3GWの石炭火力が新たに追加され、閉鎖された0.1GWを上回った。

 

石炭火力発電量の推移
石炭火力発電量とCO2排出量伸び率の推移

 

 10位のオーストラリアまでの10カ国で世界の石炭火力発電の87%を占める。これらの国のいずれも国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が示す1.5℃目標に沿った国際エネルギー機関(IEA)のSustainable Development Scenarioと整合する国家目標を持っていない。唯一、7位のドイツだけが、2038年までに石炭火力発電の停止を宣言している。

 

  ただ、Emberは昨年の石炭火力発電の減少、電力全体のCO2排出量の減少は、いずれもまだ定着しておらず、一時的な要因の影響が大きいと指摘している。たとえば、グローバルな電力需要の増加量自体が357TWhと過去10年で最も低かった。過去10年平均の半分の増加量でしかない。(この点は、今年もコロナウイルスの影響で世界経済が停滞すると、電力需要、CO2排出量とも、大幅に低下する可能性がある)

 

 石炭火力発電減少のうちでは、EUで進んだ石炭から天然ガスへの燃料転換によるものが73TWhあった。これは一度転換すると繰り返されない。原発発電増加は101TWh。このうち39TWhは日本と韓国の再稼働によるもので、今年も同様の再稼働が見込めるかは不明。一方で、風力発電と太陽光発電の再エネ発電量は合計で279TWhの増加で、石炭発電の減少量全体の259TWhを上回った。

 

石炭火力発電量の多い10カ国(日本は4番手)
石炭火力発電量の多い10カ国(日本は4番手)

 

 報告書は、「石炭火力発電の減少が続いていることは明らか。だが、気候変動を抑制する緊急の必要性を考えると、効果は不十分」と指摘している。今年も電力部門での排出量と石炭火力発電の減少が継続させるためには、再エネ等のゼロ排出量分野やエネルギー効率化部門への投資の増加が必要だ」と指摘している。

 

 報告書の主要執筆者のDave Jones氏は「各国政府は2020年代を通じて、石炭火力発電を撤退させる電力トランジション(移行)を大胆に加速すべきだ。石炭から天然ガスへのスイッチは、単に一つの化石燃料を別の化石燃料にスワップするだけの効果しかない。もっとも低コストで、もっとも迅速に『石炭の時代』を終わらせるには、風力・太陽光への迅速な切り替えを進めることだ」と強調している。

 

 風力・太陽光の再エネ発電は昨年、15%増(270TWh)となり、世界の電力供給の8.2%を占めた。ただ、再エネ増加量は過去最大だが、伸び率は今世紀で最も低かった。最も伸び率が高かったのは中国で16%増、インドとEUがそれぞれ13%増、米国12%増。報告書はパリ協定の目標達成のためには、再エネ全体で毎年15%増の伸び率が最低限必要、と求めている。

 

https://ember-climate.org/

https://ember-climate.org/project/global-power-2020/