HOME10.電力・エネルギー |国際エネルギー機関(IEA)。今年のエネルギー需要推計、前年比6%減。戦後最大の落ち込み。新型コロナ対策の経済活動制限が影響。CO2排出量も過去最大の8%減で2010年の水準に(RIEF) |

国際エネルギー機関(IEA)。今年のエネルギー需要推計、前年比6%減。戦後最大の落ち込み。新型コロナ対策の経済活動制限が影響。CO2排出量も過去最大の8%減で2010年の水準に(RIEF)

2020-05-02 00:00:42

IEA105キャプチャ

 

  国際エネルギー機関(IEA)は30日、新型コロナウイルス感染の広がりによって、各国の経済活動の制限が続くことで、2020年の世界のエネルギー需要は前年比6%減と、第二次大戦後最大の落ち込みになるとの見通しを公表した。その結果、CO2排出量も同8%減と過去最大の減少になる。過去の数度の石油危機や、リーマン危機等の金融危機をも上回る未曽有の事態となる。

 

 IEAが「Global Energy Review 2020」で指摘した。年初の4半期ベース(1~3月期)のエネルギー需要は前年同期比で3.8%減。石油換算ベースで1億5000万㌧の減少。4月初めも、同1.5%減と回復の兆しは見られていない。エネルギー需要の年間6%減は、19年の独仏英伊の欧州4カ国合計の需要分に相当する。

 

 

エネルギー需要の推移と2020年の推計(IEA)
エネルギー需要の推移と2020年の推計(IEA)

 

 大規模なエネルギー需要減の要因は、新型コロナウイルス対策で、各国が経済活動の停止、ロックダウン等を実施していることが最大の要因だ。加えて、近年、温暖化対策で化石燃料から再生可能エネルギーシフトが進んでいることで、石炭等の化石燃料の減少が目立っている。

 

 仮にロックダウンが早期に解消され、急ピッチの経済回復が図られる場合は、エネルギー需要減は3.8%減にとどまると推計している。その場合でもリーマンショック翌年(2009年)に起きた需要減の4倍増になる。反対に、ロックダウン解除後に第二波の感染拡大が発生する場合も想定される。その場合は、さらにエネルギー需要は減少し、経済低迷は深刻化することになる。

 

エネルギー源ごとの増減見通し(IEA)
エネルギー源ごとの増減見通し(IEA)

 

 エネルギーの内訳でみると、コロナ対策と温暖化対策の両方の影響を受けた石炭が、発電や産業用を中心に8%の減少。石炭火力発電所の発電量は10%以上の減少になる見通しだ。石油は人々の外出規制の影響で、自動車や航空機、船舶などの燃料需要が急減していることで、石炭を上回る9%減。天然ガスは2%減。太陽光、風力等の再エネ発電(水力含む)は5%増と、唯一増える見通し。ただ、再エネの伸び率は前年より低下し、その中でもバイオ燃料は航空機、自動車等の交通需要が減えるため、需要減に転じる。原子力は3%減。

 

 エネルギー需要が前年比マイナスになるのは、リーマンショック翌年の2009年以来。同年の減少幅は前年比0.9%減だったので、今年の6%減はその約7倍と、歴史的に大きな需要の落ち込みになる。主要国では米国が9%減、EUが全体で11%減とともに大きく落ち込む。コロナウイルスの発生源だった中国は早期の感染抑圧が成功した形で4%減。日本は7%台後半の減少。

国別のエネルギー需要減少の予想(IEA)
国別のエネルギー需要減少の予想(IEA)

 

 IEA事務局長のFatih Birol氏は「これほどの需要減少は、全エネルギー世界にとって歴史的なショックだ。再エネを除くほとんどのエネルギーへの需要が急減することの長期的な影響を判断することはまだ早いが、今回の危機はこれまでの危機とは異なる重要な影響をエネルギー業界全体に与えるだろう」と指摘している。

 

CO2排出量の推移と2020年の推計(IEA)
CO2排出量の推移と2020年の推計(IEA)

 

 エネルギー需要の歴史的な減退で、CO2排出量も急減する。年間の排出量は30.6G㌧で前年比2.6G㌧の削減(8%減)。削減量はリーマン後の2009年の削減量0.4G㌧の6倍強も多くなる見通しだ。エネルギー別の削減量への寄与は、1.1Gtが石炭減少で、1G㌧が石油、0.4G㌧がガス。国別では米国が600M㌧の減少で最大の削減国となる。

 https://www.iea.org/news/global-energy-demand-to-plunge-this-year-as-a-result-of-the-biggest-shock-since-the-second-world-war