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日本の温室効果ガス排出量、電力等124の事業所が半分を集中排出。発電所だけでも3分の1。政府の「国民運動的削減キャンペーン」に疑問。環境NGOが分析(RIEF)

2020-06-17 18:01:47

kandenn001キャプチャ

 

 日本の温室効果ガス排出量の50%は、124の発電所と大工場からの排出であることが環境NGOの分析でわかった。このうち77の発電所からの排出量が全体の3分の1を占め、そのうち半分を石炭火力発電(全体の17%)を占める。政府・環境省は国民運動的に家庭での削減等を呼びかけているが、CO2大量排出を続ける124事業所に絞った迅速な対策の実施が、はるかに効率的で有効であるといえる。

 

 (写真は、関西電力の姫路第一発電所)

 

 調査は環境NGOの気候ネットワーク(KIKO)が環境省が公表する2016年度の大口排出事業者の排出量データ(温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度)を基に分析した。

 

 それによると、日本全体の温室効果ガスの半分を排出している124事業所は、電気業(発電所)、鉄鋼業、セメント製造業、 化学工業、石油精製業、紙製造業の6業種に絞られる。対象を広げて排出量の6割とすると約490事業所、さらに大口排出事業者調査の対象1500事業所と大口運輸事業者540に広げると全体の7割になる。それ以外の3割は家庭と中小企業の熱・燃料消費、自家用車使用等となる。

 

日本の温室効果ガス排出量の主要排出源
日本の温室効果ガス排出量の主要排出源別の構成割合

 

 日本の温室効果ガス排出量が電力等の高排出産業に集中していることはこれまでも知られている。今回の調査でその構造が変わっていないことが確認された。電力分野では77の火力発電所で日本全体の31.9%の排出量で突出している。次いで鉄鋼業の16事業所が12.3%、化学・窯業土石・製油・製紙の31事業所が合計6%を排出、合計で50%を排出している計算だ。

 

  経年的に見ても、国全体の温室効果ガス排出量のほぼ半分を電力等の6大産業が占める構造は2006年以降、ほとんど変わっていない。ということはこの間の温暖化対策が総花的な展開にとどまり、電力、鉄鋼、化学等の高排出産業の抜本的な削減はほとんど進んでいないことを示す。

 

経年的な割合の変化
経年的な割合の変化

 

 全体の排出量の3分の1を占める発電所からの排出量のうち、半分(52.3%)は石炭火力で占められる。天然ガス火力の排出割合は3割減の36.5%。だが事業用発電に占める火力比率では石炭火力は32%、ガス火力は逆に3割増の42%。つまり石炭火力は3割少ない発電量なのに、温室効果ガス排出量は3割多いことになる。石炭火力は発電量当たりの排出量の大きさが目立つ。特に、最新のLNG火力発電に比べると石炭火力の排出量は2.5倍も多いという。

 

火力発電の割合
火力発電の割合

 

 こうしたことから、KIKOは「石炭火力を減らすこと、とりわけ省エネと再エネ電力増加で減った電力分で石炭火力を減らすことが温暖化対策の重点」と指摘している。しかし、実態は、日本では現在、40基以上の石炭火力新設計画が進行中。これらが全部建設・稼働されると、現状の石炭火力による排出量が5割アップすることが見込まれるという。

 

 EU等では「脱石炭火力」が進んでいるが、日本は先進国で唯一、国内での石炭火力増設計画を多数抱えている。KIKOは「大口排出業界が政策導入に反対し、これを受けて経済産業省が 反対の急先鋒に立っている。その結果、多くの日本企業は気候変動の激化で本業に悪影響を受ける可能性がある」と指摘している。「脱炭素」への道筋が見えない状況を抜本的に転換するためには、排出量取引制度や炭素税、脱石炭火力年目標の導入の具体的検討を早期に開始すべき、と提言している。

 

https://www.kikonet.org/wp/wp-content/uploads/2020/06/analysis-on-ghg-emissions-2016.pdf

https://www.env.go.jp/press/107873.html