EU 欧州グリーンディール(EGD)の軸となる「Just Transition Fund」の支援対象から原発と天然ガス除外。ファンド規模は400億ユーロで調整(RIEF)
2020-06-30 13:11:22
EU加盟国は「欧州グリーンディール(EGD)」を推進の軸として新たに設立される「Just Transition Fund(JTF:公正移行メカニズム)」の規制案で大筋、合意した。ファンドは、EGDが目指す2050年の温室効果ガス排出量ネットゼロを実現するため、域内の石炭依存度の高い地域の移行を促進するのが目的。ファンド規模は400億ユーロ(約4兆8000億円)で調整されている。対象事業からは原発の新設・解体、天然ガスを含む化石燃料事業関連の投資等の除外が決まった。
欧州委員会によると、EGDは化石燃料社会からの脱却を推進することを目的とし、JTFはそうした移行・転換を促進するファイナンス機関として設立される予定だ。対象事業としては、東欧諸国を中心に、原発維持や天然ガス事業へのファイナンスを求める動きが強くあった。
原発は操業中のCO2排出量が基本的にゼロであるほか、天然ガスも石炭等に比べるとCO2排出量が少ないのが理由だ。しかし、EGDは最終的に「2050年CO2排出ネットゼロ」を目標としており、天然ガス火力発電等を新設すると、ロックイン効果でCO2排出削減が困難になるほか、原発は使用済み燃料の処分問題が未解決のままである等の理由から除外対象となった。
除外対象はこのほか、たばこ製品の製造・加工・販売事業、EUの政府補助金ルールに該当しないもの、すでにブロードバンドネットワークがある地域への同インフラの投資、などが含まれた。
JTFでの支援対象事業としては以下の8分野を例示している。
①スタートアップ企業を含む中小企業向け投資
②新規企業設立支援
③先端技術の実用化促進を含む研究開発活動への投資
④温室効果ガス削減やエネルギー効率化、再生可能エネルギーなどの手ごろな価格で利用できるクリーンエネルギーの技術やインフラ拡大のための投資
⑤地方の輸送セクターの脱カーボン化を含む持続可能な地方交通網への投資
⑥デジタル関連投資
⑦汚染サイトの再生・再利用事業計画への投資
⑧廃棄物の防止、削減、資源効率化、再利用、修繕、リサイクル等を含むサーキュラーエコノミーを高める投資
JTFの資金規模の400億ユーロは、新型コロナウイルス感染からの回復ファンドから300億ユーロ、EUの中期予算(2021年~17年)から100億ユーロを拠出して捻出する予定。最終的には、閣僚理事会が、欧州委員会、欧州議会と調整を重ねて決定する。
化石燃料事業は石炭だけでなく、天然ガスを含むすべてを対象外とした。ただ、天然ガス事業は、JTFから締め出されても、他のEUの予算やコロナファンド等からの支援を求めているという。その場合は、「Do No Significant Harm(DNSH)」原則への適合を条件とする方向という。
https://data.consilium.europa.eu/doc/document/ST-8502-2020-REV-1/en/pdf