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南極の極点での気温上昇、過去30年間で世界平均の3倍のピッチで上昇。上昇率の過半は人類由来の温室効果ガス排出量の増大。欧米研究チームが分析(RIEF)

2020-07-01 17:29:49

South001キャプチャ

 

 北極圏のシベリアで38℃の気温を記録したというニュースが世界を駆け巡った一方で、南極でも極点付近での気温上昇がこの30年で、世界平均の3倍のスピードで進んでいることを、欧米の研究チームが明らかにした。従来は、南極内部は気候変動の影響をほとんど受けないとみられていた。だが、1989~2018年までの30年間で1.8℃の上昇で、1901~2000年の100年間の世界平均の0.6℃を3倍上回った。特に2000年以降の上昇が大きい。明らかに加速しているのだ。

 

 調査は豪ビクトリア大学等の研究チームが、北極点に最も近いアムンゼン・スコット基地(米)の1957年以降の観測データを使って、200以上の気候モデルへの適合を分析した。その結果、1989~2018年の30年間の10年間平均中位値は、0.61±0.34℃。世界平均の約3倍だった。特に2000年以降に、2002、2009、2013、2018の各年で過去最高気温を記録している。

 

30年間の南極極点の気温の変化。明らかに1980年以降に上昇している
これまでの南極極点の気温の変化。明らかに1980年以降に上昇している

 

 季節的な変化では、秋の上昇度が0.89±0.62℃と最も高く、次いで、夏(0.62±0.59℃)、春(0.61±0.58℃)と続く。秋と夏の気温上昇度は30年期間でみるといずれも過去最高の温度上昇となっている。冬季間は目立った気温上昇は観測されていない。研究チームは、これらの気温上昇は自然の影響を超えている、と指摘している。

 

 通常、南極の平均気温は、冬季間のマイナス60℃から夏にはマイナス20℃で推移する。ただ南極全体が同じ基調で変化するわけではなく、地域差がかなりある。南極の西部の大半と南極半島は20世紀を通じて、温度上昇が徐々に進行していた。これに対して南極点付近は1980年まで温暖化の影響はほとんど観測に表れてこなかった。その後、2000年ころに、西部地域の温暖化状況は突然、停止し、南極半島は逆に気温の低下がみられたという。

 

South002キャプチャ

 

 研究者によると、1980年以降に極点付近での気温上昇が目立つようになったのは、南極半島東側のウェッデル海で生じる激しい低気圧と嵐の影響が、時計の針が進むような流れで、南極点に吹き込み、暖気と湿気を南極平原全体に広げる展開が続いてきたとみている。同時に、気温上昇原因の約20%は西太平洋熱帯域の海温が過去20年の間、異常な上昇を続けたことも影響しているとみている。

 

 研究チームはこうした気圧の変化と海温上昇の複合影響の度合いを、気候モデルを使って解明したとしている。さらに南極の地形もこうした変化に影響を与えているとみられる。この点は、南極の南部とインド洋で隔てられる東南極氷床が、南極の西部よりも北部側に張り出す形となって、これが東西で異なった気象パターンを引き起こし、気候インパクトの違いにつながっていると推察している。

 

 東南極周辺で吹く西風は同地域の気候変動を比較的安定させるが、西南極の一部地域は、高緯度南太平洋から吹き込む温度が高く、湿気も大量に含んだ激しい嵐が再三、発生するので、気候変動も不安定な状態になるという。

 

南極でも海氷は減少へ
南極でも海氷は減少へ

 

 極点付近での30年間で1.8℃の温度上昇のうち、半分以上の約1℃は、温室効果ガス(GHG)の上昇が影響していると推計している。人類由来のGHG増大の影響だ。研究チームは、過去30年間の気温変化を人類の影響がない自然のトレンドケースと比較したところ、観測データは、99.9%以上の割合で自然トレンドの温度を上回った。人類由来による温度上昇が極点で起きていることが改めて確認された。

 

 北極圏に続いて、今回、南極でも明確なデータによって、気温上昇の「加速化」がみられることが示された。これらのことは、われわれが想定するよりもはるかに早く、地球全体に気候変動の影響が進んでいることを示す。その結果は、気候変動の原因者である我々人類に対して、明確に示されることを意味している。

 

 北極圏内で38℃の気温上昇がもたらされ、永久凍土の融解が確実になってきたことで、ロシアの気候学者が「もはや気候変動の勢いを止めることはできない。適応策を優先せざるを得ない」とした警告は現実のものになりつつある。https://rief-jp.org/ct4/104019?ctid=70(RIEF)

 

https://www.nature.com/articles/s41558-020-0815-z

https://www.nature.com/articles/s41558-020-0815-z.epdf?sharing_token=hk0iD82tzQg37-Py4dmpZ9RgN0jAjWel9jnR3ZoTv0NZj9FMZf-OGYzRW4VVW5B-YJpPLoSDHzkgSCgtnA_D7Wvwv3zTcoXhxHAq-F2aL3ghP1LYfoMqePUQ2Jdv1hRIOm_k49N03XI-Pc6ltRW8Xz1ZTh2O0FMLpkabggR8oxsNug6mvJnDlRRM6f-nDaOhqzIYGylWgEad3y4DBLUpGyBhv1_aNLI0SlVe6b5ZMkBcApwiwqrKYMYvrkUXhAbN8N5gBz1vUKBentSUnry_VJq31pecmcZCZ0QWYpMNOjLBpzr3XkPFK5CljcIRaby6xsQeMzmzo2ajQa27m72grECfbXscWZ4w7j63YpkjSrw%3D&tracking_referrer=www.theguardian.com