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グリーンランドの氷河の溶融量、2000年以来、降雪量を上回る。年間約500億㌧の溶融量が海洋に追加され、海面上昇要因に。米オハイオ大学研究チームが指摘(RIEF)

2020-08-18 22:52:32

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 気候変動の影響で、グリーンランドへの降雪が減少し、氷河の溶融による損失が上回る状況になっていることを確認する研究論文が発表された。グリーランドの氷河は北極海の海氷とは異なり、溶融分は海面上昇の加速につながる。研究者らは温暖化の進行が着実に進んでいることを指摘している。

 

 論文は米オハイオ大学の研究チームが科学ジャーナルNatureのCommunications Earth & Environmentに掲載した。研究チームは1980年から2000年の間に、グリーランドから年間平均4500億㌧の氷河の氷が溶融し、年間グリーンランドに降り積もる氷河の元になる降雪量とほぼ同量だったが、それ以降は溶融量が上回っていることを突き止めた。

 

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 2000年~2005年の氷河の後退状況は、全体的にkm当たり4~5%の減少にスピードアップし、溶融量は5000億㌧に増えているが、降雪量のほうは増えていないという。その結果、少なくとも海面への溶融水の流出量は年間500億㌧増えていることになる。溶融増大の要因は、降雪の減少と、氷河が接している海洋の温度上昇等の影響が考えられる。

 

 研究チームの代表、Michalea King氏は「われわれの研究で判明したことは、海洋に流出する氷は氷河に降り積もる雪よりもはるかに多いということだ」と指摘している。これまでグリーンランドの氷河の溶融による世界の海面上昇は約1mmでしかないとされている。それは溶融と降雪によって氷河のバランスがとれてきたためだ。

 

 しかし、ある研究では、溶融増大によって21世紀中に7.4cmの海面上昇を引き起こすとの試算があるほか、グリーンランドを覆う氷河が全て溶けると、世界の海面は7m上昇するとの推計もある。7m上昇はともかく、すでに溶融量が次第に増えだしているのは間違いないようだ。研究者たちは、「世界はすでに、tipping point(転換点)を超えたようだ。一度、転換点を超えると、戻るのは難しい」と指摘している。

 

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2020-08/osu-wgi081320.php

https://www.nature.com/articles/s43247-020-0001-2