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中国・三峡ダム、先週末にダムの貯水限界上限に、残り10mを切る。危険水準をすでに20m上回る。当局は放水量増大へ、上下流域両方での洪水被害続く(RIEF)

2020-08-23 15:46:54

Three0019キャプチャ

 

   世界中が懸念している中国の三峡ダムの流量増大が先週末の21日に、ダムの貯水限界上限に10mを切るレベルにまで達した。同ダムの水位はすでに危険水準を20m上回っているが、21日の水位は165.6mまで上昇、ダムの設計上の上限175mに9.5mにまで迫っている。中国当局は、放水量を増やすとともに、上下流両方の沿岸の住民に洪水からの避難を求めている。

 

 (写真は、三峡ダムの貯水量増大で洪水が起きている重慶市の風景)

 

 各紙の報道によると、6月から豪雨が降り続く同河川周辺からダムに流れ込む水量は減少せず、20日には毎秒7万5000㎥の流入を記録した。6月に記録した最大流入量の同6万1000㎥を、1万4000㎥も上回った。当局は同日の放水量を同4万8800㎥に増やしたが、差額の2万6200㎥分がダムの水位を押し上げる形となっている。

 

 すでに、同ダム周辺の各地では土砂崩れや、沿岸部での床上浸水等が起きている。上流からの流入量がほぼ3カ月にわたって増大し続けている中で、先週末の増量は一晩で2mの上昇を引き起こした。ダムの貯水量はジリジリと上昇を続け、ダムの貯水限界に迫っている。

 

 同ダムは揚子江(長江)に建設されており、今年の降雨は例年の2倍以上の量に上っているという。中国当局は「ダムは安全。現在の降雨は例年になく長期にわたっているが、ダムは1世紀に一度の洪水にも耐えられる」と説明、安全性を強調している。

 

放水量を上回る流入量
放水量を上回る流入量

 

Three005キャプチャ

 

 ただ、ダムの湖面は湖北省宜昌市から重慶まで約660kmに及ぶ。東京から新幹線で兵庫県姫路までの距離とほぼ同じ広大さだ。このため、ダム周辺の各地では降雨による土砂崩れや洪水による住宅の床上浸水、交通網の遮断等の被害が続いている。先週までの経済的被害が1800億人民元(約260億㌦)、6300万の人々が被害を受けているという。

 

 ダムの上流の重慶は、ダムの湖面が広がり続けるため、各地で洪水が発生している。また下流には、新型コロナウイルス感染拡大の発端となった武漢も含まれている。同市の各所もダムからの放水量が増大し続けることによって、河川沿岸の道路や住宅等が浸水する状況が長期化している。

 

6月以来の
7月以来のダムの水位と流入、流出量の差
周辺のすべての水が三峡ダムに注ぎ込む
周辺のすべての水が三峡ダムに注ぎ込む

 

 三峡ダムは2012年に完成、年間発電量は1000億 kWhに達する。これは中国全体の必要電力量の2%で、日本に置き換えると日本の発電量の1割分に相当する。発電力だけでなく、下流域での洪水制御、湖面での水運利用の拡大等、多面的な経済効果を発揮している。

 

  一方で、ダム建設に際しては、周辺住民200万人規模の強制移転が実施されたほか、ダム湖沿いでは土砂崩れの頻発、ダム湖貯水の流量の低下による汚染問題等の環境・災害問題が頻繁に指摘されている。また総貯水量393億㎥という膨大の水の圧力によって、周辺地域での地震誘発のリスクも指摘されている。

https://www.bangkokpost.com/world/1972727/floods-test-limits-of-three-gorges-dam

https://www.youtube.com/watch?v=nybfjFkDowU