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EUの「2050年カーボン・ニュートラル」目標設定に唯一、抵抗しているポーランドが「軟化」か。4兆2000億円規模のエネルギー転換の投資をEU等に期待(RIEF)

2020-09-14 17:06:41

Poland001キャプチャ

 

 EUが目指す2050年のカーボン・ニュートラル(ネットゼロ)目標設定にもっとも抵抗しているポーランドが軟化してきた。同国の副気候変動相が、「カーボンニュートラルへの貢献」を明言したうえで、 石炭火力を廃止するには1500億ズロチ(約337億ユーロ=約4兆2000億円)の投資が必要とし、EUと金融市場の協力を要請した。

 

 (写真は、Zoom会議に出席した副気候変動相のAdam Guibourgé-Czetwertynski氏)

 

 「カーボンニュートラル」への貢献に言明したのは、副気候変動相のAdam Guibourgé-Czetwertynski氏。同省はこのほど2040年までのエネルギーロードマップを改定した。同政策に伴うオンライン会議に出席して方針を語った。

 

ポーランドの石炭火力発電所(カトヴィッツ近郊)
ポーランドの石炭火力発電所(カトヴィッツ近郊)

 

 ポーランドの閣僚がEUが目指す「2050年カーボンニュートラル」への貢献に言及したのは、これまでにない「強いシグナル」と受け止められている。Guibourgé-Czetwertynski氏は「政府はその目標達成に向けて進むことと、ポーランド経済全体を転換することを決断する予定」とも語った。

 

 ポーランドは現時点で、EUが目指す2050年の「カーボン・ニュートラル」目標の設定に、唯一明確な姿勢を示していない国とされる。「2050年目標」に抵抗してきたのは、同国の発電量の75%以上を石炭火力でまかなっているためだ。

 

 しかし、同国を除く26カ国が欧州グリーンディール(EGD)の目標として「ネットゼロ」にほぼ同意しているほか、新型コロナウイルス感染拡大による経済の疲弊等から、自国のエネルギー転換を急ぐ必要があるとの判断にシフトしてきたとみられる。

 

ポーランドの炭鉱労働者を 労うパーティーに出席した同国のモラヴィウッチ首相(㊧)
ポーランドの炭鉱労働者を
労うパーティーに出席した同国のモラヴィエツキ首相(㊧)

 

 改定された同国の2040年エネルギー戦略では、石炭火力初での廃止には、1500億ズロチの投資が必要と指摘。石炭廃止後のエネルギー確保のため、再エネ発電の強化と、同国初の原子力発電所の建設を打ち出している。

 

 今回の副気候変動相の発言は、こうしたエネルギー政策への他のEU諸国の反応を見定めるために、あえて発言したとみられている。EUおよび他の加盟国の反応が好意的であれば、政府として正式な方針を打ち出し、EUからの資金拠出等を含めた財政措置を取りたい考えのようだ。

 

 実際にポーランドの石炭火力発電のうち70%以上は、稼働年数が30年以上の老朽化したものが多く、今後数年から10数年の間にリプレースが必要になる。そうした際に、再エネや原発等に切り替える新投資をEU資金でまかないたい考えのようだ。

 

 さらに、もしポーランドがEUの気候変動政策に賛同しないままだと、2050年目標達成のために設立するJust Transition Fund(公正ファンド)などへの資金調達申込みは半分に抑えられるとの「脅し」も受けている。

 

 2040年までの改定エネルギー政策では、原発をベース電源とし、残りは再エネ発電を強化して対応するとしている。再エネでは洋上風力発電と太陽光発電を軸に据える。洋上風力で8-11GW、太陽光で10-16GWの新規発電を確保するとしている。

 

 ポーランド電力産業協会(PKEE)の副代表のPawel Cioch氏によると、「EUが定める気候目標に合致するには、総額で685億ユーロの投資が今後数十年の間に必要になる。最大の課題は、他のEU加盟国はすでにカーボン・ニュートラルに向けて動いているが、われわれはこれからであり、出発点が異なっている」と強調。石炭に代わる再エネ等の発電投資への支援が必要と述べている。

https://www.gov.pl/web/climate