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米GE、新規石炭火力発電建設事業からの撤退を宣言。既存事業も一部は売却、閉鎖へ。トランプ政権の石炭産業支援のエネルギー政策も効果なく(RIEF)

2020-09-23 01:04:38

GE001キャプチャ

 

  米ゼネラル・エレクトリック(GE)は21日、新規の石炭火力発電事業から撤退する方針を発表した。既存の発電所については、売却、閉鎖、子会社化を含めて縮小する。一方で、再生可能エネルギー発電をコア発電事業と位置づけ、「手ごろな価格で、信頼性が高く、アクセスし易く、サステナブルな電力」の供給に力を入れる。トランプ政権は石炭復権を掲げたエネルギー政策をとってきたが、GEは市場のESG重視の流れや、新型コロナウイルスの影響による市況の悪化等で、事業選別を判断した。

 

 GEは過去100年以上、世界中で石炭火力発電等の蒸気発電設備を建造してきた。現在、世界のコンバインド・サイクルプラントの41%、化石燃料発電所の30%を供給している。今回の発表はこのうち、中心事業として展開してきた石炭火力発電の新規建設を停止し、既存の石炭火力事業はメインテナンス等は続けるが、発電事業の軸足は、再エネ発電事業に移すという事業転換だ。

 これまでGEを支えてきた石炭火力等の蒸気発電型の電力事業は、再エネ事業のコスト低下に伴って、市場競争力を低下させ、発電所建設ペースの鈍化に伴う業績悪化につながっていた。GEは2015年に仏アルストムから同事業を中心とした電力事業を買収した。だが、2018年にはその買収事業によって2兆円近い減損損失を計上、1万人の人員削減も行うなどの「経営戦略の失敗」も露呈している。

 

 米国の石炭発電事業は、トランプ政権の事業支援策にもかかわらず、シェール石油・ガスの開発拡大による天然ガス価格の低下と、太陽光・風力等の再生エネ発電のコスト低下の両面からの影響で低迷してきた。その結果、全米の発電量に占める石炭火力発電の比率は、2008年の約5割から、20年上半期(1~6月)は2割弱にまで低下している。

 

 GE Power Portfolioの社長兼CEOでGEグループのシニア副社長も務めるRussell Stokes氏は「今回の決定はGEが継続的に進めている転換(Transformation)の一環で、われわれは経済に魅力的で、成長軌道にある電力事業にフォーカスしていく。ただ、新規の石炭火力建設からは撤退するが、既存の石炭火力発電顧客に対するサポートは継続し、既存設備をGEの最高級の技術とサービスにより、コスト効率的なサービスを提供する」と述べている。

 また、原発事業の運営・展開は引き続き継続していく。  これまでGEは、化石燃料依存の電力事業を段階的に縮小する一方で、航空機エンジン事業を柱に事業再生をめざす計画を推進していた。しかし新型コロナウイルス感染拡大に伴って内外の航空機需要が激減、気候変動の影響による航空機排ガス規制の高まりも受け、航空機事業も赤字となっている。

 GEはグループ内のバイオ医薬事業を売却するなどして資金繰りをつないでいる。グローバル経済の回復がさらに遅れれば、事業継続のために追加の資金調達が必要になる。グローバルな機関投資家や金融機関は、TCFD提言への対応もあり、ESG重視の投融資姿勢を一段と強めている。このため、GEは新規石炭関連事業をコア事業から外すことで、市場の評価の低下を食い止めようとの判断をとったともいえる。

 ただ、既存発電事業は一部は売却や閉鎖等を進めるとする一方で、事業継続をする発電事業者に対しては、Stokes氏が引き続き「GEの技術とサービスを提供していく」と明言している。この点は、ESG的には「座礁資産リスク」を抱え続けることにもなる。GEが今回の「新規石炭火力事業」に続いて、既存の石炭・化石燃料関連事業の縮小から撤退への道筋をスケジュール化できるかどうか。GEが市場から問われる状況は続くとみられる。

https://www.ge.com/news/press-releases/ge-pursue-exit-new-build-coal-power-market