HOME |温暖化の影響で「50年に一度の豪雨」、1.5倍から3.3倍増大していることが、統計解析で証明。2017年の九州西部豪雨、18年の西日本豪雨で明確化。気象庁研究所らのチーム(RIEF) |

温暖化の影響で「50年に一度の豪雨」、1.5倍から3.3倍増大していることが、統計解析で証明。2017年の九州西部豪雨、18年の西日本豪雨で明確化。気象庁研究所らのチーム(RIEF)

2020-10-20 20:44:46

weather002キャプチャ

 

  地球温暖化の影響で、「50年に一回の大雨」の確率が、2017年7月の九州西部大雨被害で1.5倍、18年7月の瀬戸内被害で3.3倍に増大していることが、気象庁気象研究所等の分析でデータ的にも明らかになった。自然が本来持っている「ゆらぎ」の影響とは別に、温暖化の影響を統計的に把握、解析できたという。トランプ米大統領にも分析結果を送ってもらいたい。

 

 (上図は、過去30年の大雨事例から見積もられた温暖化による大雨日数の変化データ)

 

 分析したのは、気象庁気象研究所のほか、東京大学大気海洋研究所、国立環境研究所、海洋研究開発機構の研究チーム。最新の数値シミュレーションを用いて、2017年の九州北部豪雨と18年の西日本豪雨が発生する確率を分析した。分析結果は科学誌「npj Climate and Atmospheric Science」に掲載された。

過去の二つの豪雨に相当する時期・地域での降水量と再現機関。赤線は実際の気象条件、青線は温暖化がなかったと仮定した場合の再現期間
過去の二つの豪雨に相当する時期・地域での降水量と再現機関。赤線は実際の気象条件、青線は温暖化がなかったと仮定した場合の再現期間

 

 それによると、一般的に、豪雨等の異常気象は、大気や海洋が本来もっている「ゆらぎ」(平均的な状態からの自律的なズレ)が偶然重なって発生することから、温暖化の影響がどう影響したかを定量的に把握することは困難とされてきた。

 

 しかし研究チームは、気候モデルに大量の数値シュミレーション結果を活用する「イベント・アトリビューション」の手法で、過去実験の1981~2010年の期間における50年に一度の雨量を分析して「ゆらぎ」を統計的に把握し、温暖化の影響を定量化することに成功した。

 

 その結果、17年の九州西部豪雨では、温暖化の影響がなかった場合には、約54年に一度の頻度の日降水量が実際には約36年に一度の頻度にまで増加していたという。また18年の西日本豪雨の場合も、約68年に一度の3日間降水量が、実際には約21年に一度の頻度に増加していたことがデータで裏付けられた。

 

 これらを発生確率に換算すると、九州西部豪雨は「50年に一度」の日降水量の発生確率は、1.9%から2.8%に約1.5倍に増え、西日本豪雨では、1.5%から4.8%に約3.3倍増加していたことが確認された。

 

https://www.mri-jma.go.jp/Topics/R02/021020/press_release021020.pdf