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政府・与党、「2050年ネットゼロ」目標を法制化の方針。地球温暖化対策推進法改正で目標年限を盛り込み。目標達成を担保する独立行政委員会(3条委員会)の設置も必要(各紙)

2020-12-20 21:17:49

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  各紙の報道によると、政府・与党は、菅義偉首相が宣言した2050年までの「温室効果ガス排出量実質ゼロ」公約を明確化するため、地球温暖化対策推進法に目標年限を盛り込む方針という。温暖化対策を推進する法的根拠を明確にするとしている。法制化とともに、目標達成のための中期計画の策定と毎年の予算の確保、さらに政府による目標達成に向けた政策の妥当性をチェックする国家行政組織法3条に基づく独立委員会の設置も求められる。

 

 日本経済新聞が報じた。同方針を21年11月に英グラスゴーで開く国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で、日本政府のコミットメントとして内外に強調する狙いという。21年1月に召集する通常国会に提出するとしている。ただ、同報道では、目標に基づく2030年の中間目標の明示、目標達成を確実にするための中間計画の設定等については言及していない。

 

 現行の温暖化計画では、2030年目標とともに、長期目標として「2050年まで80%削減」を定めている。だが、これらの中長期目標は地球温暖化対策推進法自体でなく、同法に基づく実行計画に書き込み、閣議で決める形としている。このため、法的拘束力が弱く、各省庁が実施する個々の温暖化対策も、目標を踏まえて決められておらず、「説明責任」を欠いているという課題があった。

 

 一方、EUや英国等の場合、50年の法的目標を達成するために、短期、中期の温室効果ガス削減の時限目標を設定、毎年その目標の達成状況を、専門家による独立委員会がチェックするといった体制をとっている。これは、一気にネットゼロが実現できるわけではなく、毎年の積み上げと、対策のための予算の確保、効果の無い対策の停止や、新たな技術革新の早期導入等の見直しの提言等を行うためだ。

 

 英国では、目標達成の評価と促進のために、5年単位の中期計画を設定し、独立委員会(Climate Change Committee: CCC)によるチェックと、その内容が国民にわかるようにしている。わが国の場合も、「50年ネットゼロ」を法制化するだけにとどまらず、目標実現を確実にするために、政府の政策の妥当性を常にチェック・検証し、最適政策を担保する措置が求められる。https://www.theccc.org.uk/

 

 そのためには、環境、経産等の各省庁から独立した国家行政組織法3条に基づく独立独立行政員会の設置が望ましい。いわゆる「3条委員会」だ。各省庁の外局として設置する8条委員会では、本省の政策の妥当性をチェックする機能が限られるためだ。

 ただ、日本には、この分野で政府から独立した専門家は少ないことから、実質的にワークする委員会を設立できるかという課題がある。環境、経済産業両省が抱える「御用学者」等を中心とした委員会になるようだと、3条委員会にしても、あまり機能しない可能性がある。

 

 そう考えると、独立温暖化委員会(仮称)の委員は、日本人に拘らず、海外の主要な気候学者や政策担当者等を登用することも一案だろう。温暖化対策はグローバル課題であり、日本がグローバル人材を登用することは、目標達成に向けた国際的な信頼を高めることにもなると期待される。

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201220&ng=DGKKZO67513150Q0A221C2MM8000