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国際協力銀行(JBIC)、ベトナムのブンアン2石炭火力発電への融資契約締結。日本の3メガバンク等の協調融資に道拓く。菅政権の「2050年カーボンニュートラル」との整合性論点に(RIEF)

2021-01-01 21:44:31

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 国際協力銀行(JBIC)は、温暖化への影響だけでなく、地域への環境負荷等の深刻さで、内外の環境NGOや機関投資家からも懸念が示されていたベトナムのブンアン2石炭火力発電事業向けに、総額約6億3600万㌦(約657億円)の融資契約を結んだと発表した。JBICの契約に伴い、日本の3メガバンクも協調融資に踏み切る見通し。菅政権として「2050年カーボンニュートラル」を掲げる一方で、温室効果ガス排出量の多い石炭火力発電事業を海外で推進する形となる。

 

 (写真は、ブンアン1号の石炭火力発電所)

 

 JBICは年末の12月29日に発表した。今回の融資は同行の「成長投資ファシリティ」として、民間の三井住友銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友信託銀行が3メガバンク等の金融機関、韓国輸出入銀行との協調融資で実施する。協調融資総額は約17億6700万㌦(約1825億円)。

 

 ブンアン2はベトナムのハティン省ハイフォン村で、事業主体のVung Ang II Thermal Power Limited Liability Company(VAPCO)が推進している。600MWの超々臨界圧石炭火力発電所(USC)2基建設する計画だ。発電した電力は25年間にわたって、ベトナム国営電力公社(Vietnam Electricity:EVN)に売電する。

 

 日本政府はUSCについて高効率発電として、国内でも引き続き建設推進の姿勢をとっている。だが、CO2排出量は天然ガス火力発電の約2倍とされ、EU等では新規建設は見送られている。

 

 一方で同事業は、2017、18年の日越首脳共同声明による両国のエネルギー分野における協力強化の具体的施策の一つとして位置付けられている。いわば「政治案件」。日本政府は、「インフラシステム輸出戦略」の代表事業ともしている。

 

 事業自体は三菱商事が主導。当初は香港の電力会社CLPホールディングスも出資の予定だったが、CLPは2019年12月に脱石炭方針を発表し、同事業から撤退。融資団からも英スタンダードチャータード銀行、シンガポールのOCBC銀行、DBS銀行等が、EPC(設計・調達・建設)で参加予定の米GEも温暖化加速につながるとして撤退した。

 

 このため、内外の環境NGOのほか、ノルウェーのNordea Asset Management、アムンディ、AP7、アリアンツ等の欧州系の機関投資家が連名で、三菱商事やJBIC等に計画への懸念を表明していた。しかし、三菱商事は出資から撤退したCLPの代わりに、韓国電力公社(KEPCO)を引き入れ、GEが引き揚げたEPC事業も韓国の三星物産と斗山重工業に委ねるなどの形で、「日韓連合」に変更。ファイナンスは日韓の公的金融機関と日本の大手金融機関が全額引き受ける体制で事業継続を貫いた。

 

 国内の気候ネットワークやFoE Japan等の環境NGOは、今回のJBICの融資決定に対して、「気候変動対策との矛盾や環境影響評価の不備など、多くの批判への説明責任を果たさぬまま、JBICが同事業への支援を決定したことに対し強く抗議の意を示すとともに、改めて事業に関係する企業や金融機関に対し、事業から撤退するよう求める」との声明を公表した。

 

 建設されるベトナムの中部では今年、1カ月の間に台風が4件も襲来、上陸して、洪水など大規模な被害をもたらした。こうしたことから、内外のNGOや現地住民からは、新規の石炭火力建設は、パリ協定の目標達成とかけ離れた措置、との声が上がっている。建設される発電所自体、気候変動の進行によって操業停止等の物理リスクにも直面することになる。

https://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press-2020/1229-014147.html

https://www.kikonet.org/info/press-release/2020-12-29/VA2-JBIC