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イタリア・ベニスの洪水発生の増大。Moody'sが、同市の長期的な信用格付にネガティブな影響を指摘。洪水発生後の事後対策だけでは限界。気候変動が信用格付に影響する事例(RIEF)

2021-01-27 16:44:14

Venice002キャプチャ

 

 米格付会社のMoody’sは、イタリアの世界的観光地のベニス(ヴェネツィア)の信用評価について、気候変動の進行による高潮の影響と地盤沈下等で、長期的にはネガティブにみている与えていると指摘した。気候変動を一因として自治体の信用格付にマイナスの影響が示されるのは珍しい。

 

 ベニスは現在、Moody’sの格付ではBa1(安定的)と評価されている。同社は今回、ベニスについて、①洪水を悪化させる高潮と地盤沈下の増加が顕著になる大きなリスクに直面している②信用への影響は、効果的な予防策がとられるかどうかにかかっているーーと指摘した。

 

 同社によると、ベニスの洪水発生の頻度と深刻さは、過去50年の間に200%増加している。その結果、市は洪水被害後の市街のインフラの維持、補修等の費用が増大している。洪水被害の頻繁化は、観光客の減少や、地域の事業活動、その他の経済活動の停滞にもつながっている。

 

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 このままでは2040年までに、海面上昇が進んで、同市の沿岸に近いジュデッカ、サンタ クローチェ地区は、年中、水没する可能性があるという。

 

 ベニス市は現在、洪水のたびに、政府の緊急ファンドから短期的な資金を得て、水没被害対策を実施している。しかし、Moody’sは、洪水による同市の長期的格付は、政府の基金と、世界遺産であるベニスを守るための国内外の協力次第という状況にあると懸念している。

 

 気候変動の一層の促進が進むと、ベニス以外の都市や地域で、気候変動による豪雨や洪水、土砂崩れ等のリスクが高まる可能性がある。ベニスの洪水もさらに加速するとみられ、対策コストも増大が見込まれる。だが、イタリア全体に自然災害被害激化の可能性が高まると、ベニスだけを支援し続けることは難しくなる。

 

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 Moody’sの信用格付担当のマッシオ・ビスコンティ(Massimo Visconti)氏は「現在のところ、洪水による経済的影響や税収減少等による市財政への打撃は、政府による損失支援等もあって限定的だ。しかし、洪水がさらに頻繁化していくと、予防的手段としての代替的な投資があるかどうかに、長期的評価は依存することになる」と指摘している。

 

 洪水被害の補償や、損傷した地域の補修等といった、これまでの対処療法から、ベニスを守るための抜本的なインフラ工事等の是非が、課題になりそうだ。

https://www.moodys.com/research/Moodys-Greater-flooding-in-Venice-to-negatively-impact-credit-quality–PBC_1258533