HOME10.電力・エネルギー |自然エネルギー導入推進で、日本のエネルギー自給率68%に改善。2050年の太陽光・風力発電の合計導入可能量は200GW以上。自然エネだけで100%電力供給へ。自然エネルギー財団(RIEF) |

自然エネルギー導入推進で、日本のエネルギー自給率68%に改善。2050年の太陽光・風力発電の合計導入可能量は200GW以上。自然エネだけで100%電力供給へ。自然エネルギー財団(RIEF)

2021-03-09 15:26:29

REN001キャプチャ

 

  公益財団法人自然エネルギー財団は、2050年脱炭素化について、自然エネルギー拡大とエネルギー効率化を中心にして実現する道筋を示したレポートを発表した。化石燃料輸入の削減、自然エネルギーの拡大によって、日本のエネルギーコストは現在より低下し、エネルギー自給率は12%から68%へと大きく改善されるとしている。同財団は評価に際して、ドイツ、フィンランドの研究機関等との共同研究を実施、その分析を土台とした。

 


 土台となったレポートは、ドイツのシンクタンク、アゴラ・エナギーヴェンデ、フィンランドのラッペンランタ工科大学と同財団による共同研究の「Renewable pathways to climate-neutral Japan: reaching zero emissions by 2050 in the Japanese energy system」。https://www.renewable-ei.org/activities/reports/20210309_2.php



  財団のレポートによると、太陽光発電も風力発電も、すでに国内には大きな開発ポテンシャルが存在することが明らかになっており、それらのコスト低下に伴い大量の自然エネルギーの供給が可能になるとしている。共同研究の結果では、2050年には太陽光発電が524GW、風力発電が陸上・洋上の合計で151GW導入され、他の自然エネルギー電源とあわせ、電力は100%自然エネルギーで供給可能としている。

 

 そうした自然エネルギー資源は、主に北海道や東北に多いことから、両地方のエネルギー資源を活用するため、北海道から本州への直流の連系線を17GW分、新設するなど、送電網の増強が必要としている。



    エネルギー需要は、人口減少(2050までに2017年比20%減)の影響とともに、需要側の省エネ推進によって2020年~2050年で35%削減すると想定した。共同研究におけるモデル計算の結果によると、これに加えて、家庭等でのヒートポンプや電気自動車(EV)などの、電力をベースとしたエネルギー効率の高い技術の導入によって、サービスレベルを落とさずにさらにエネルギー効率がアップするとしている。電力システム全体の効率化効果も加わり、総一次エネルギー需要は2020年比で54%削減されると推計している。



 電化が困難な、 高温の熱利用などの需要分野については、グリーン水素やグリーン合成燃料の活用を促していくとしている。これらのグリーン燃料は、製造過程でもCO2を排出しない、自然エネルギー電力によって製造され、供給される。全量を国内で製造することも可能だが、コスト面から一定量の輸入にメリットがあるとした。共同研究のシナリオによると、グリーン水素の約50%を海外から輸入するケースが経済性も高いとしている。

 


    グリーン水素やグリーン合成燃料は、大量の自然エネルギー電力から製造するため、輸入の場合も含め、コストは電力より高くなる。従って、電化の可能性を最大限に追求するとともに、サーキュラー・エコノミーへの移行を進めることで、鉄鋼などの素材需要を削減、限定的な使用にとどめることが重要、としている。

 


    火力発電、原子力発電は、2035年以降、コスト効果からみて積極的に使用していく経済的合理性に乏しくなる、と指摘している。経団連等はカーボン回収貯留(CCS)技術を用いた火力発電の延命を目指しているが、そうした場合、さらににコストが高くなるほか、回収されたCO2の貯留地の確保は極めて困難、と指摘、CCS活用の“非現実性”を強調している。

 

 原子力発電についても、2060年に原子力発電が供給できるのは、全原子炉の再稼働と60年への運転延長、高い設備利用率の維持などを想定した場合でも、必要な電力量の4~5%程度にしかならないとしている。したがって、日本の脱炭素化をこれらの技術に依存して実現する戦略は非現実的なものと言わざるを得ない、と述べている。



 レポートはこうした点を指摘したうえで、「自然エネルギー電力、電化、エネルギー効率化、グリーン水素、グリーン合成燃料の活用で、脱炭素社会へのエネルギー転換を実現できる。この場合の2050年の総エネルギーコストは、化石燃料輸入費の削減、エネルギー効率化の進展、自然エネルギーコストの低下などで、2020年より29%低下、エネルギー自給率は現在の12%から68%へと大きく改善される」としている。

 

 その結果、エネルギー起源CO2排出は実質ゼロとなり、エネルギー起源以外の排出量を吸収量以下に抑えればGHG排出のネットゼロが実現できる、と道筋を示している。

 
www.agora-energiewende.org


https://www.renewable-ei.org/pdfdownload/activities/REI_JP-RenewablePathwaysDecarboStrategy.pdf

https://www.renewable-ei.org/activities/reports/20210309_2.php