ジョン・ケリー米気候特使、「気候外交」開始。まず英国でジョンソン首相らと会談。米欧日を含む温室効果ガス主要排出20カ国の責任を強調。英国での新規石炭鉱山開発計画を暗に非難(RIEF)
2021-03-10 07:35:45
ジョン・ケリー米気候担当特使は8日、訪問先の英国で、ボリス・ジョンソン首相らと会談した。ケリー氏は「気候変動を抑制するためには、もっとも“ダーティ”な石炭には未来はない。米、中、インド、EU、日本等の20の国(地域)が世界の温室効果ガス排出量の81%を占めている。これらの国々は自らの役割を果たさねばならない」と強調した。
(写真は、英紙デーリーミラーより)
ケリー氏は、就任後初めての訪欧。英国の後、欧州大陸に渡り、ベルギーのブリュッセルでEU首脳と会うほか、フランスではマクロン大統領との会談も予定されている。今回、ケリー氏が英国で「石炭非難」を展開したことは、英国内ではイングランド北西部のカンブリア地方で計画されている地下深部での鉄鋼用石炭新規開発計画の議論にも一石を投じたと受け止められたようだ。
英カンブリア地区で石炭鉱山開発計画への反対行動
同氏はロンドンでは、ジョンソン首相のほか、リシ・スナク財務相、ドミニク・ラーブ外相、COP26の議長のアロク・シャーマ氏らと会談した。会談でケリー氏は、気候危機を緩和するための共同行動を展開するための国際的モメンタムの構築を求めたとしている。
ケリー氏が石炭火力による主要CO2排出国として、米国を含む20カ国を名指ししたことは、効果ある気候変動対策を展開するには、パリ協定参加の各国の間でも、温室効果ガス排出量の多い国々の責任が最も大きいことを改めて強調したことになる。米国は4月22日に気候リーダーズサミットを開くが、日本を含む「20カ国」の決意が求められる。
①米英両国は排出削減を約束するとともに、世界の主要国に「気候野心」を強化することを要請する②米英両国は2050年までのネット削減を完全に約束し、すべての国々にもネットゼロに向けて野心的な国別温暖化対策貢献(NDCs)をとって「1.5℃目標」を維持するよう要請する③気候インパクトの影響を受ける国々への資金供給を支援し、すべての国々とともにパリ協定のルールブックを仕上げることを期待する。
一方、英国内では西カンブリア・カウンティが、昨年10月、同地でのホワイトヘブン近くで、地下深部に新たな炭鉱を開発する許可を発行した。英国内での新規炭鉱開発許可が出たのは30年ぶり。同炭鉱の石炭は鉄鋼用で火力発電用ではない。しかし、鉄鋼製造に際しても大量のCO2が排出するため、クリーン鉄鋼技術等の開発が急がれている。
英国の環境NGO等はジョンソン政権に、カウンティの許可取り消しを求めているが、同政権は自治体の権限として消極的な姿勢をとっている。COP26開催国での新規石炭鉱山開発という事態に、内外のNGOが反発するとともに、英国が抱える2050年ネットゼロ目標が揺らぐ懸念も出ている。ケリー氏の「世界で最もダーティな石炭」発言は、英国政府に向けられたとの見方もある。