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パブアニューギニア(PNG)、熱帯雨林保全の国主導「REDD+クレジット」を初の商業取引でカナダのエネルギー会社に売却。「ネットゼロ」達成へのクレジット需要増大で活用に期待(RIEF)

2021-04-12 13:23:36

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  パブアニューギニア独立国(PNG)は、同国の森林保全から生み出されるREDD+クレジットを、トン当たり11㌦で「Blackstone Energy Services」(カナダ)に売却する契約を結んだ。BlackStoneが6100クレジットを購入、同社の過去と今後のCO2排出量の相殺に活用する。国が発行主体となるREDD+クレジットのビジネス取引は初めてとされる。

 PNGが売却したクレジットは、同国の1億1380万エーカーの熱帯雨林を保全することで約900万㌧のCO2吸収クレジットの一部。同クレジットは、REDD+あるいはREDD+ Results Units (RRUs)として、国連の気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局によって認証を得ている。保全された森林面積は日本の国土よりも広い範囲に及ぶ。

 

 REDDは「森林減少・劣化に由来する排出の削減(Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation: REDD)」を意味する。途上国の森林が持つ温室効果ガス保全機能を認証して排出削減力を認める仕組みで、UNFCCCで合意している。「+」は森林保全に加えて、森林の再生・回復のための植林や持続可能な森林経営等で、CO2吸収力をさらに高める取り組みを加えることをいう。

 

パブアニューギニアの熱帯雨林(JICAの報告書より)
パブアニューギニアの熱帯雨林(JICAの報告書より)

 

 PNGは15年かけて、同地域の森林保全や地域内のコミュニティの協力等を得て、REDD+スキームを開発してきた。Blackstone Energy Servicesの今回の購入はパイロット契約で、同社の2003年以来のCO2排出量と、2030年までのカーボンフットプリントの削減に充当するとしている。同社は今後、同社のエネルギー供給を受ける顧客企業がカーボンニュートラルを達成するために、PNGを含む熱帯雨林帯の国が発行するクレジットを提供していきたいとしている。

 同社のCEO、Ryan Duffy氏は「今回のクレジット購入は、パリ協定の下で、グローバルなカーボンバジェットに基づく各国の努力と連携することで、ネットゼロ目標の達成に貢献することを目指している。国家レベルの自然保全努力から生み出されるUNFCCC認証付きのクレジットは、われわれ自身と我々の顧客にとって重要だ」と述べている。

 PNGの環境・自然保全・気候変動担当大臣のWera Mori氏は「世界は現在、気候変動の脅威に直面している。われわれは熱帯雨林をREDD+を通じて守ることで気候変動の影響を緩和している。PNGにとっても昨年提出したパリ協定の改定国別温暖化対策貢献(NDC)の活動でもある」と指摘している。PNGはBlackstoneへのクレジット売却で得た資金は、森林保全や森林地域のコミュニティ保全等のために充当する。

 

 熱帯雨林帯の国々で構成する「Coalition for Rainforest Nations」の代表、Kevin Conrad氏は「今回のクレジット取引はUNFCCによるREDD+メカニズムにとって素晴らしいマイルストーンだ。Blackstone社だけでなく、現在交渉中の他の購入希望企業の存在は、新たなカーボンクレジットに対して企業の需要が高まることを示している。REDD+とRRUsは国際的なクレジット市場の拡大にとって重要な役割を果たすと考えている」と評価している。

https://www.rainforestcoalition.org/news/blackstone-energy-services-buys-first-sovereign-government-issued-redd-forestry-carbon-credits-to-save-papua-new-guineas-rainforests/