HOME8.温暖化・気候変動 |国立環境研究所、日本の太陽光発電設備の多くが里山に設置され、里山の環境悪化を招いていると研究論文で指摘。環境省が再エネの「開発優先」にシフトしていることを浮き彫りに(RIEF) |

国立環境研究所、日本の太陽光発電設備の多くが里山に設置され、里山の環境悪化を招いていると研究論文で指摘。環境省が再エネの「開発優先」にシフトしていることを浮き彫りに(RIEF)

2021-04-12 23:26:48

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 日本の太陽光発電設備(出力0.5MW以上)の多くが里山に建設され、比較的小型の施設の建設で累積的に自然環境を損なっていることがわかった。国立環境研究所が調査した。自然保護区でも1000施設以上、国立公園内でも101施設が建設されている。同研究所は今後もこのような立地選択が続くと、樹林や農地がさらに失われると指摘。自然保護区での設置を制限し、都市での建設に誘導する必要性を強調している。

 

 政府の「2050年ネットゼロ」宣言で、太陽光や風力発電等の再生可能エネルギー事業への投資がさらに増えるとみられる。環境省は風力発電についても環境アセスメント基準を緩和して「開発優先」の姿勢をとる構えだが、太陽光も風力も、普及促進と同時に、自然環境の改変、破壊につながるリスクを踏まえる必要がある。環境省の行政姿勢が開発優先に転じると、里山の破壊はさらに進むことになる。

 

 国立環境研究所の研究チームの研究成果は国際学術誌「Science of the Total Environment」(オンライン版)で発表された。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33752006/

 

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 研究チームは、太陽光発電施設による土地改変の実態を調べるため、日本と韓国の0.5MW以上の発電設備を地図化して分布等を調べた。その結果、日本での設置数は8725施設に上り、改変面積は229.211㎢。大阪市内の面積とほぼ同じだった。

 

 それらの66.36%が10MWまでの中規模施設で、こうした比較的小型の施設が里山周辺に累積的に建設され、里山を構成する二次林や植林地、草原、農地などが失われているという。鳥獣保護区や国立公園などの自然保護区での建設も、合計1027施設(約35㎢)を占めた。鳥獣保護区が605施設、都道府県立自然公園が245施設、国立公園が101施設。

 

 調査した太陽光発電設備の多くが都市部ではなく、里山に累積的に建設され、自然環境を損なっていることがわかった。同研究所は今後もこのような立地選択が続くと、樹林や農地がさらに失われると指摘。自然保護区での設置を制限し、都市での建設に誘導する必要性を強調している。

 

 今後の推計によると、全体の施設面積が2倍になった場合、自然保護区内での建設は2.66倍に増加すると予測している。同研究所は、こうした傾向のままでは自然悪化が進むと指摘。仮に施設面積を2倍にする場合は、自然保護区での設置を制限し、都市での建設に誘導すれば、樹林(天然林、二次林・人工林)や農地(畑・水田)の生態系の損失は1.3~3.5%程度抑制できるとしている。

 

 研究所は、里山を構成する人工林や農地など人間の手が加わった環境にも、生物多様性保全上、重要な場所は多く存在するほか、樹林や水田には、防災機能のように気候変動への適応における役割も期待される点を強調している。さらに、カーボンニュートラルを進めるうえで、森林や農地等の持つ炭素蓄積や健全な水循環の確保などの生態系サービスや生物多様性の保全も同時に目指すべきと指摘している。

https://www.nies.go.jp/whatsnew/20210329/20210329.html