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日米首脳会議、「日米気候パートナーシップ」で合意。2030年目標の早期達成と、クリーンエネルギー技術開発等で協力。「進化した原発」を含む。インド太平洋諸国の脱炭素化支援も(RIEF)

2021-04-18 00:49:53

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  菅義偉首相とジョー・バイデン米大統領は16日(日本時間17日)、ワシントンで日米首脳会議を開いた。この中で、両首脳は、気候危機は世界にとってン人類の存在を脅かす脅威であり、両国は同危機と闘うグローバルな努力を主導する重要な役割を担わねばならない、と共同声明で宣言した。そのための両国の責任として、「日米気候パートナーシップ」の実施で合意した。

 

 日米気候パートナーシップは、①パリ協定の2030年目標(NDCs)の実行と達成②クリーンエネルギー技術の開発、展開、イノベーションの推進③他の国、特にインド太平洋諸国の脱炭素化を支援する努力ーーの3分野で構成される。

 

記者会見に臨む両首脳
記者会見に向かう両首脳

 

 ①については、パリ協定が定めた1.5℃目標を達成するため、2030年の自国の目標を協定の目標と適合させるため、断固たる行動をとる、とした。両国はそうした目標達成のため、気候野心での協力と、協定の国内的実施のための対話を実施する。

 

 ②のクリーンエネルギー技術の開発・協力では、再生可能エネルギー、エネルギー貯蔵(蓄電池や長期保存のエネルギー貯蔵システム)、スマートグリッド、エネルギー効率化(省エネ)、水素、カーボン回収利用貯蔵(CSUS)/カーボンリサイクル、産業の低炭素化、 「進化した原子力発電」等を列挙した。気候変動に対応し適応できるインフラを開発、展開、利用するために、再エネ、グリッド最適化、デマンド・レスポンス、省エネ等の分野での協力促進も含めた。

 

 日米協力対象に盛り込まれた「進化した原発(Advanced Nuclear power)」は、小型モジュール型原子炉(SMR)や第4世代原発等の開発協力を想定しているとみられる。原発をクリーンエネルギーとしてとらえることの是非については、EUでも議論になっている。原発は発電中はCO2を排出しないものの、建設・廃棄に際しては、膨大なCO2排出を伴う。また、使用済み核燃料廃棄物の貯蔵体制は米国を含むどの国でも答えは出ていない。SMRは安全性は、既存の原発よりも高まるとされるものの、完全ではなく、廃棄物処理の課題は解決しない。

 

 ③のインド太平洋諸国を中心とする多国の脱炭素支援では、これらの国々での気候脆弱性の克服を支援するため、2050年よりも前に、グローバルなネットゼロを実現するために、再エネの急速な展開、各国の経済の脱炭素化の促進、これらの地域での多様で野心的、現実的な移行パスの加速をさせるとした。

 

 これらのパートナーシップの具体化に際しては、すでに両国および第三国等で構築している気候フレームワークも活用対象とする。既存の日米メコン・パワーパートナーシップ(Japan-U.S.-Mekong Power Partnership :JUMPP)や、新たに設立する日米クリーンエネルギーパートナーシップ(JapanU.S. Clean Energy Partnership:JUCEP)等のほか、他の国レベルの気候・クリーンエネルギー協力活動等を含む。

 

 途上国支援は、再エネや適応インフラ等の分野での計画、分析、建設、能力増強等を含む。また2050年のネットゼロ達成、2020年代の排出削減強化に合致する公的な国際ファインナンスに協調するほか、炭素集約型投資から、気候適合型投資に向けて、官民の資本の流れを転換させることで協力するとしている。

 

https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2021/04/16/u-s-japan-joint-leaders-statement-u-s-japan-global-partnership-for-a-new-era/

https://www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2021/04/U.S.-Japan-Climate-Partnership.pdf