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バイデン米大統領と文在寅韓国大統領の米韓首脳会議。海外での新規石炭火力発電への例外なしの公的ファイナンス停止で合意。日本の「石炭火力固執姿勢」を牽制か(RIEF)

2021-05-24 23:28:20

bunnキャプチャ

 

  バイデン米大統領と文在寅韓国大統領は先週末の米韓首脳会談で、気候変動対策で途上国向け等の海外での新規の石炭火力発電事業を終了させるために共同行動をとっていくことで一致した。途上国向け石炭火力発電事業については先のG7の気候・環境相会議で、日本が完全停止に反対し、条件付きでの合意にとどまった。米韓の「共同行動宣言」は、「変わらない日本」を意識したようにもみえる。

 

 米韓両国のプレスリリースによると、両国首脳は政治、経済等の多様な課題を協議した中で、気候変動対策での基本的行動での一致を表明した。「気候とクリーンエネルギーでの共通目標の進展について」と題し、「2050年ネットゼロ」のグローバルベースでの達成と、2020年代の思い切った排出削減のために、公的な国際金融を適合させるとして、途上国を支援し、官民資金の流れを、炭素集約型投資から気候適合投資への切り替えを促す行動をとるとした。

 

 そのうえで、OECDや他の国際的な場において、「『unabated(排出削減をしていない)』な石炭火力発電事業へのあらゆる形の新規の公的ファイナンスを終えさせるために協働する」と明言した。これは先のG7気候・環境相会議でのコミュニケ採択に際して、主催国の英国が目指した「海外での新規石炭火力事業への公的ファイナンスの停止合意」に対して、日本が「各国(途上国)の裁量に基づく限られた環境の場合を除いて」との例外規定の挿入に拘り、押し切ったことを踏まえているように読める。http://rief-jp.org/ct8/114409

 

 韓国自身、これまで途上国での石炭火力事業については積極的に展開し、日本の官民と連携して推進してきた。しかし、韓国では昨年、議員立法で石炭火力発電の海外輸出全面禁止法案が提出されるなど、政治環境も変化し、今年4月、文大統領はバイデン大統領主催の気候リーダーズサミットの際に、日本に先んじる形で、すべての海外での石炭火力事業への新規ファイナンス停止を公約したとされる。

 

 米韓首脳が、今回の日韓首脳会議で改めて、海外での新規石炭火力事業への公的ファイナンスを例外なく終えさせると宣言したことは、両国間の確認の意味を超えて、他の国への働きかけを意識したものと言える。声明の中で「OECDとその他の国際的な場で」「あらゆる形での新規の公的ファイナンス」の終了のために協働するとした。日本が途上国向けの石炭火力を続ける根拠の一つはOECDの輸出信用アレンジメントで、「新設の石炭火力発電所」が公的ファイナンスの対象とされている点にある。

 

 同規定の改定に対しても、日本政府は反対姿勢を続けている。米韓首脳が「OECDの場」を強調したのは、同アレンジメントの改定(石炭火力発電をすべて除外)を目指すことを意味しているのは明らかだ。欧州諸国も石炭火力への公的ファイナンスの廃止については、基本的に米韓と同じスタンスであり、日本がこのまま方針を変えないと、G7だけでなく、OECDの中でも孤立してしまいかねない。

 

 米韓は気候変動問題だけでなく、10月の国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)も意識し、気候危機の克服のために、自然ベースのソリューションとして、森林や海洋、沿岸のエコシステム等が持つ自然力によるカーボン吸収力を保全し、高めるためにの協力と情報交換でも一致した。

 

 さらに両国はグローバルレベルでの海洋廃棄物とプラスチック汚染課題でも協力するとした。この点で、文大統領は2022年に韓国釜山で、国連環境計画(UNEP)や米国家海洋大気局(OAA)等との連携で開く第7回国際海洋廃棄物会議をアピールし、バイデン大統領に、米国の参加と協力を求めた。

 

 エネルギー協力では、現行の米韓エネルギー政策対話を強化し、クリーンエネルギー、脱炭素化協力を推進するとした。協力テーマには水素貯蔵に関する研究開発、米国市場での電気自動車用蓄電池製造での協力、リチウムイオン電池のリサイクリング、グリッドスケールでのエネルギー貯蔵、洋上風力発電等の新規再エネ事業の展開等をあげている。

http://english1.president.go.kr/BriefingSpeeches/Briefings

https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2021/05/21/fact-sheet-united-states-republic-of-korea-partnership/