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2030年の海面上昇による経済的被害、東京は7.5兆円、85万人が被害。アジア都市の影響被害総額は約80兆円に。グリーンピース東アジアが試算報告書(RIEF)

2021-06-24 18:15:23

GB002キャプチャ

 

 環境NGOグリーンピース東アジアは24日、現状のままの政策対応が続いた場合、2030年時点で、東京をはじめとするアジアの主要7都市が海面上昇等で受ける経済的影響予測を公表した。その結果、海面上昇と暴風雨の激化等による洪水リスクの顕在化で、7都市合計で1500万人が被害を受け、7240億㌦(約79兆6000億円)の経済的被害生じると推計している。東京の被害額は都の総GDP比の約7%に相当する682億㌦(約7兆5000億円)、83万人が被害を受ける。

 

 (上図は、東京の海面上昇の影響による被害額の地域別状況)

 

 報告書は「2030年のアジア7都市における極端な海面上昇の経済的影響予測」。現行の政策対応にとどまる場合(BAU)とIPCC(気候変動に関する政府間パネル)のRCP8.5シナリオ(最悪シナリオ)が続いた場合、海面上昇と高潮や高波による沿岸部の浸・冠水面積、人口密度、購買力平価GDPのデータを用いた分析で、各都市の影響度を推計した。

 

各都市が受ける影響
各都市が受ける影響

 

 対象の都市は、東京のほか、バンコク、香港、ジャカルタ、ソウル、台北、マニラ。このうち、ソウルと台北は、川を通じて海と接しており、その分、影響が少なかった。他の5都市は直接、沿岸部を抱えている。海面上昇は現在、グローバル平均で年間1.6~1.9mmの上昇ペースで推移しており、10年後には16~19mmと、約2cmの上昇になる。

 

 最も影響の大きい都市は、タイのバンコク。メガデルタ地帯に築かれたバンコクは都市全体が平均して海面上1.5mでしかない。かつ都市化の影響で毎年30mmの地盤沈下が進んでいる。このため雨の多いモンスーンシーズンには、とりわけ洪水リスクが高まる。

 

洪水の長期化で通勤も水の中
洪水の長期化で通勤も水の中

 

 10年後の2030年には、RCP8.5の最悪シナリオの場合、バンコク市内の96%以上の土地が、海面以下になるリスクがあるとしている。被害面積は1512.94㎢、被害額は5122億000万㌦と、7都市中で断トツに大きい。被害人口も1045万人と唯一、1000万人台が予想される。

 

 東京は被害面積で第3位、被害額ではジャカルタとほぼ同順位の2位で682億㌦、被害者数は83万人で4位。東京全体では平均海抜が40mあるが、港東5区(墨田、江東、足立、葛飾、江戸川)は海面下の「ゼロメートル地帯」が多い。たとえば江戸川区は70%が海面下にある。2030年には東京全土の約4%が海面下となり、洪水、高潮、豪雨の影響による被害額は682億㌦に上る。

 

 7都市中で最も影響が少ないのは韓国のソウル。ソウルは直接、海に面しておらず、市内を流れる漢河が黄海に流れ込む形で海とつながっている。このため97%の土地は海面より高い。2030年の時点で影響を受ける面積は東京の5分の1、経済的被害額は47億㌦で東京の15分の1。被害者も13万人にとどまる。

 

 調査をまとめたグリーンピース東アジアは、「アジアの主要都市は気候変動の影響に対して特に脆弱であることがわかった。各国政府、自治体・企業は、各都市の経済への影響と社会の安定を守るため、気候変動を加速させる化石燃料へのファイナンスを迅速に停止する必要がある」と指摘している。

 

https://www.greenpeace.org/static/planet4-eastasia-stateless/2021/06/966e1865-gpea-asian-cites-sea-level-rise-report-200621-f-3.pdf