バイデン米政権、「気候変動と難民増の関係」初めて認める。気候変動対応を国家安全保障・外交課題と位置づけ。インテリジェントを含め、関係省庁の政策に気候変動対応盛り込み（RIEF）
2021-10-25 17:09:48
バイデン米政権は、国家安全保障会議を軸に、国家情報長官オフィス（ONDI）、国防省、国家安全保障省の3省庁によるそれぞれの分析結果を踏まえ、気候危機問題を国家の安全保障・外交課題として位置付けた。
バイデン大統領は就任後の1月27日に、気候危機を国内外で米国の外交政策と安全保障政策の中心に据える大統領令（EO14008）を、2月29日に気候変動による難民問題へのインパクトを評価する大統領令（EO14013）を、それぞれ発出した。今回、これを受け関係省庁が報告書を公表した。
国家情報長官オフィス（ONDI）は米インテリジェントコミュニティが作成した気候変動評価の分析レポート「National Intelligence Estimate（NIE）on Climate Change」を踏まえ、気候変動は物理リスクの高まりで安全保障への影響が増大するほか、他の国々が気候危機にどう対応するかによって、米国の国家安全保障政策のリスクを高めると指摘した。
そのうえで、高まる気候リスクを3分野で示した。①各国の気候負担の配分や、エネルギ―・トランジションの展開をめぐり、各国間で議論が高まる地政学的緊張の増大②物理リスクを巡る国際的な地政学的現象の発生③特定の国や地域での国家レベルの安定性を阻害する気候影響等を指摘した。https://www.dni.gov/files/ODNI/documents/assessments/NIE_Climate_Change_and_National_Security.pdf
国防省の気候リスク分析では、気候変動の脅威と、気候対策を進めるグローバルな努力の両方が、米国の国防上の利害、関係国とのリレーションシップ、競争、さらに優先度等に影響を与えると指摘した。国防省の気候リスク分析（DCRA）は、ペンタゴンが気候変動の戦略リスクについてまとめた最初のレポートで、気候リスクが広範囲な安全保障に及ぼす影響を分析している。
その結果、DCRAはリスク緩和のために、国防省が気候考慮を同盟国やパートナー国とのエンゲージメントに組み込むことを求めている。こうした指摘に基づき、すでに国防省は北大西洋条約機構（NATO）諸国との間で気候変動と安全保障の協力関係を強め、今年6月に行動計画を打ち出している。https://media.defense.gov/2021/Oct/21/2002877353/-1/-1/0/DOD-CLIMATE-RISK-ANALYSIS-FINAL.PDF
内務省の国土安全保障省（DHS）は、気候変動に対して国土を守るための戦略的フレームワークを示した。ハリケーンや森林火災等の気候変動による自然災害増から、国土と国民を保全する対策を強化するもので、すべてのコミュニティに対して、緊急の危機を通じた主導や、将来のレジリエンスを高めるための行動対策等を支援する必要性を強調している。戦略的フレームワークは、こうした危機対応を内外で実践するガイドになるとしている。
フレームワークの要点として5つの重点項目をあげている。①個人やコミュニティの気候レジリエンスを高める②気候関連による緊急性の増大に対応するため、準備（readiness）の構築③気候科学を戦略、政策、プログラム、予算に盛り込む④持続可能でレジリエントなDHSとなるための投資⑤DHSの全従業員に気候変動のリスク・情報を適正に伝えるーー等だ。https://www.dhs.gov/publication/dhs-strategic-framework-addressing-climate-change
気候難民のインパクトについては、国家安全保障会議がレポートを公表。米政府として初めて、気候変動が難民問題に影響を与えることのつながりを認め、その評価を指摘した。https://www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2021/10/Report-on-the-Impact-of-Climate-Change-on-Migration.pdf
Research Institute for Environmental Finance