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環境NGOのグリーンピースの国際担当責任者が、ドイツ政府の気候特使に就任へ。しかも米国籍。ドイツ連立政権のグリーン党が「スカウト」。気候外交に一石(RIEF)

2022-02-09 18:10:13

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  環境NGOグリーンピースの国際活動の責任者であるジェニファー・モーガン氏が、ドイツ政府に気候問題担当特使に抜擢される。現在のシュルツ連立政権を構成するグリーン党選出のベアボック外相が選出を決定したという。モーガン氏は米国籍だが、今後はドイツ政府代表として、今年の国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)をはじめとする国際的な気候政策をドイツ政府の立場で、取り組むことになる。

 

 モーガン氏は米国ニュージャージー州生まれの55歳。2016年からグリーンピース・インターナショナルの代表を務めている。

 

 経歴をたどると、1994年に気候NGOの米Climate Action Network(CAN)のコーディネーター、98年にWWFのグローバル・気候・キャンペーン担当、2006年に気候シンクタンクのE3G、09年に世界資源研究所(WRI)の気候プログラムのグローバル責任者と、一貫して気候変動問題に取り組むNGO、NPOの要職を経てきた。アクティビスト中のアクティビストといえる。

 

 昨年11月のCOP26でも、先進国が排出削減よりもカーボンクレジット促進を推進する動きに強い批判を表明していた。外相のアンナレーナ・ベアボック氏は、元グリーン党の党首であり、連立政権の気候・環境政策については同党が主導することを明確にしている。これまでCOP交渉等では、先進国の中でドイツの存在感は、日本政府ほどではないが、どちらかというと希薄で、欧州勢の中では英仏にリードされ、米バイデン政権とも距離感があるとみられてきた。

 

COP26にアクティビストとして参加したモーガン氏
COP26にアクティビストとして参加したモーガン氏

 

 しかし、米国人でグローバル環境NGOの国際担当、というモーガン氏を、ドイツ政府が「スカウト」することで、気候外交でのドイツの存在感が一気に高まる可能性が出てきた。COPでの活躍だけではない。ドイツは今年、先進7カ国会議(G7)の議長国でもある。またメルケル前首相が主導する形で、前COPと次期COPをつなぐ中間的な国際討議の場として「ぺテルベルグ気候対話(Petersberg Climate Dialogue)」も開いている(今年は5月開催)。こうした国際的な気候外交の場でモーガン氏がホスト役を担う可能性もある。

 

 モーガン氏はドイツとの関係も深い。ドイツの気候学者のハンス・ヨアヒム・シェルフーバー氏が主導したドイツ諮問委員会(WBGU)に参加したほか、ドイツ政府の「持続可能な開発のための評議会RNE)」のメンバーも務めている。ポツダム気候影響研究所の科学諮問委員会、独環境団体ジャーマンウォッチの名誉会員も務めている。ドイツ語も堪能だ。

 

 報道ではモーガン氏は、外務省の担当相になるとの情報もある。ただ、ドイツの閣僚レベルのポストに就任するにはドイツ国籍が必須で、現在、国籍取得の手続き中ともされる。モーガン氏は長年のNGO活動で、国際的な気候交渉の裏も表も熟知している。米国の大統領気候特使のジョン・ケリー氏やEU欧州委員会副委員長のフランス・ティメルマンスとも人脈があり、ドイツの気候外交にとって確かに適役かもしれない。

 

 ただ、「妥協することを知らない行動家」としても有名。昨年10月にはシェルの気候政策を「グリーンウォッシュ」として抗議するオランダでの直接活動に自らも、カヤックに乗って参加するなどの「言行一致」の行動派でもある。

 

 国際気候交渉が、「宣言」と「行動」のギャップを埋めきれない状況が続く中で、モーガン氏の行動力が先進国と途上国の距離を埋めるための起爆剤となるか、あるいは各国間の対立をより鮮明にする結果につながるか。期待と関心が高まる。

 

https://www.reuters.com/business/cop/germany-taps-greenpeace-chief-climate-envoy-2022-02-08/