連日の猛暑で40℃以上の高温が続く欧州諸国。特に南欧のポルトガルでは森林火災が拡大し、非常事態宣言が出された。同国では2017年にも全国規模で森林火災が発生し、100人以上が焼死する事態に至っており、懸念が深まっている。同国の森林火災に対応するため、隣国のスペインは消防用の飛行機2機を派遣した。
先週日曜には、首都リスボン郊外で、約3000人の消防士が森林火災の消火に当たった。火災多発の要因は、例年以上の高温と、熱波の到来が大きい。また大西洋から吹き付ける風が火災を拡大する要因にもなっている。加えて、同国の森林は成長の早いオーストラリア産のユーカリや松の木等が大量に植林され、森林の構造が変わってしまったことも影響しているという。
ユーカリは成長が早い一方で、木に油分が多く、燃えやすいのが特徴とされる。気候変動による高温、熱波に加えて、生態系を無視した森林経営のツケが「炎上」している格好だ。首相のAntónio Costa氏は、森林火災の要因が気候変動と森林経営の構造的課題によるものと認めた上で、「だれも火災リスクで安心して眠れない」と懸念を深めている。

国全土に非常事態宣言を出したポルトガル政府は、住民に森林地域に入ることを禁じたほか、農業従事者にはトラクターやコンバイン等の機械・機器の使用禁止を求めている。機器等から出る火花が火災を誘発するリスクがあるためとしている。イベントでの花火等の使用も禁じられている。
これまでのところ、消火に当たった消防士ら少なくとも29人が火傷等の負傷を負ったとされる。EUもポルトガルに対して救援隊の派遣を検討している。同国だけではなく、先月には欧州全体を強烈な熱波が覆い、フランスやスペイン、イタリア等の各地で気温40℃以上を記録した。
スペインでも、バレンシア地方や他の地域でも熱波の影響で、森林火災が発生した。イタリアの首都ローマでも過去最高気温の40.6℃を記録した。ポーランドやオーストリア等の中欧諸国でも軒並み高温が続いている。英国でも同様だが、英国の場合、一般家庭に冷房・空調がないところが多く、高齢者や身障者等の健康に対する不安も指摘されている。