HOME8.温暖化・気候変動 |昨年の水害による被害額約3700億円。過去10年で8番目の水準。しかし直近5年平均値は初の1兆円乗せ。気候変動の影響で、水害被害の恒常化進む。国土交通省の調べ(各紙) |

昨年の水害による被害額約3700億円。過去10年で8番目の水準。しかし直近5年平均値は初の1兆円乗せ。気候変動の影響で、水害被害の恒常化進む。国土交通省の調べ(各紙)

2022-09-18 16:30:52

takeoshi001キャプチャ

 

  国土交通省の推計によると、昨年のわが国で発生した水害による被害額(暫定値)は約3700億円で、2012年からの10年間では8番目の被害額だった。ただ、同年を含む5年(2017~21年)平均の被害額は1兆320億円となり、初の1兆円台に乗せた。12~16年平均の3820億円の約2.7倍。気候変動による自然災害の発生が恒常化、増大化していることを示している。

 

 (写真は、水害被害のイメージ)

 

 国土交通省は1961年以来、国内での水害(洪水、内水、高潮、津波、土石流、地滑り等)による被害額等(建物被害額等の直接的な物的被害額等)の統計を公表している。21年の被害額3700億円を都道府県別でみると、最も被害額が多かったのは佐賀県(被害額約680億円、ついで福岡県約520億円、広島県約420億円の順。

 

 

過去の5年平均の水害被害の推移(日本経済新聞より)
過去の5年平均の水害被害の推移(日本経済新聞より)

 

 主要な水害をもたらしたのは、21年8月に西日本から東日本の広範な範囲で起きた豪雨と秋雨前線の活発化による豪雨被害で総額2400億円。同年全体の被害額の約3分の2に相当する。日本付近に停滞している前線の活動が活発となり、各地で河川の氾濫や、土砂災害 等が発生。佐賀県、福岡県、広島県等の都道府県で、死者13人、家屋の全壊約50棟、半壊約2000棟、床上浸水約4000棟、床下浸水約6000棟等の被害となった。

 

 さらに、同年6月末から7月上旬にかけての梅雨前線の活発化によって西日本から東北地方の広い範囲で大雨となり、総額830億円の水害被害を出した。同水害では、島根県、広島県、静岡県等の都道府県で、死者27人、行方不明者2人、家屋の全壊約60棟、半壊約100棟、床上浸水約600棟、床下浸水約3000棟等の被害が発生した。

 

 21年の水害被害では、河川の氾濫や土砂災害などによって、浸水や倒壊・流失等の被害を受けた建物は約1万5000棟に上った。面積換算では宅地や農地など約1万8000haが影響を受けた。同年の被害額は2年連続で前年を下回ったが、5年平均では逆に、過去の5年平均に比べて最高の被害額となった。同省が公表した被害額は建物等の物的な損失のみの集計で、人的被害や交通機関、被災企業の生産活動などに及ぼす影響を含めると、経済的な被害額はさらに拡大する。

 

 過去5年間で最も被害額が多かったのは、2019年の約2兆2000億円。次いで18年の約1兆4000億円。この2年分が全体の被害額を高めた。21年は最も少なかったが、それ以外の年も5000億円以上の被害額だったことから、5年平均で1兆円となった。その前の年平均は3820億円で21年単年度とほぼ同規模。直近5年間の被害額の急増ぶりが顕著だ。

 

 政府は水害対策として、昨年中に、川の流域全体で被害を抑える「流域治水」等での適応策を強化するため、特定都市河川浸水被害対策法など関連する9つの法律を改正している。新たな水害対策の柱として、水害発生リスクの高い地域を「浸水被害防止区域」と位置づけ、住民に安全な場所への移住を促す方針を打ち出している。5戸以上の集団移転が対象で、移転先の住宅・土地の購入に絡むローンの利子相当額や引っ越し費用などを公費で支援するとしている。

https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001499495.pdf

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220918&ng=DGKKZO64436400X10C22A9EA1000