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国際気象情報機関「コペルニクス」。7月のグローバルな平均気温が観測史上最高になると発表。すでに今月第一週と第三週の平均気温はパリ協定の「1.5℃目標」を突破(RIEF)

2023-07-28 23:57:16

Copernicus001キャプチャ

上図は、7月の世界の平均気温の推移。今年の7月は突出している)

 

  世界気象機関(WMO)とEUが組織する気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス(C3S)」は27日、今年7月の世界の平均気温が観測史上最高に上昇すると発表した。すでに7月の月初からの3週連続して過去最高の気温が続き、同月第一週、第三週は、ともに産業革命前以来の気温の上昇が、パリ協定の抑制目標である「1.5℃」を超えた。国連のグテレス事務総長は「月末に7月全体の記録が出るのを待つまでもなく、今年の7月は過去最高の厳しい夏だ。明らかに地球全体が災害状態。これまで何度も繰り返し警告してきた通りのことだが、唯一の驚きは、変化のスピード(の加速)だ」と警告を発した。

 

 今年のグローバルな平均気温の上昇は、5月以来、過去に観測された記録を上回るペースで続いている。6月も、もっとも気温の高い6月となった。したがって、2か月連続で記録的な高温が北半球全体で続いていることになる。これまでの観測データによると、過去最も暑かった平均気温の月は2019年7月で16.63℃だった。今月23日までの平均気温はそれを上回る16.95℃。7月の正式な観測データは8月8日に公表される予定。

 

 7月の6日の日平均の気温のグローバル中間値は、2016年8月に記録した過去最高気温を上回る17.08℃だった。その前後の7月5日、7日もそれぞれ0.01℃ずつ低いだけだった。日平均だけではない。週平均も、7月第一週と、第三週のグローバル気温中間値は、パリ協定の目標である産業革命前以来の平均気温の上昇を「1.5℃」に抑制する水準を突破した。

 

日ベースの世界の平均気温の変化。今年の温度(赤線)は「例外的」に高い
日ベースの世界の平均気温の変化。今年の温度(赤線)は「例外的」に高い

 

 異例の7月の気温上昇の主因は、4月から続いている海洋表面の温度(SST)の上昇が大きい。7月19日の日ベースのSSTは過去最高値より0.001℃低いだけの20.94℃に達した。こうした海温の上昇は、エルニーニョと人為の影響による温暖化の影響が大きいとされる。

 

 C3SディレクターのCarlo Buontempo(カルロ・ブオンテンポ)氏は「現状の記録的な気温上昇は、グローバルに大気中の温度が急上昇するトレンドの一つの現われ。それは人間活動による温室効果ガス(GHG)の排出増加が主要なドライバーになっている。7月の記録は今年だけの現象にとどまらないだろう。C3Sの季節予測によると、長期的な陸上の気温はこれまでの平均を十分に上回って上昇するとみている」と指摘。この夏の気温の上昇が「気候変動顕在化」の始まりとの見方を示している。

 

  すでにWMOは7月4日の時点で、現在の気候現象は北半球の多くの地域と海洋において異常熱波を引き起こしていると警告している。北半球全体の海洋の6月の平均温度(SSTs)は過去最高値を0.91℃上回っている。WMOの事務局長のPetteri Taalas氏は「7月に多くの人々に影響を与えた異常気象は、気候変動の『ひどい現実(harsh reality)』であり、将来の『予兆(foretaste)』だ。GHG排出量の削減はより緊急性を増している」と指摘している。

 

 実際に、欧州ではギリシャ等の南欧諸国での森林火災が例年以上の勢いで増大している。北米でもカナダ、米西部州等での森林火災が絶えない。ロシアのシベリアでは、永久凍土の融解がスピードを増して進んでいる。自然の改変が広がることにより、熱波や干害等で人々の健康被害も増大している。人々はこうした猛暑で温暖化の進行を実感するが、しかし夏が終われば、また関心が薄れがちになる。各国政府もコストのかかる抜本的な気候対策には躊躇し、小手先の対策でお茶を濁し続けている。残り時間がさらに少なくなっているのは間違いないのだが・・。

https://climate.copernicus.eu/july-2023-sees-multiple-global-temperature-records-broken