9月の世界の平均気温も観測史上最高値を記録。6月以降、4カ月連続で「最高平均気温」を更新。気象専門家は「気候変動は10年後のことではなく、『今、ここにある』」と警告（RIEF）
2023-10-06 20:57:07
（上図は、1940年～2023年の各9月の平均気温を、1991～2020年平均と対比させたもの。ERA5）
世界の9月の平均気温が、観測史上最高値となった。この結果、6月以降、4カ月連続で地球の気温は過去最高を続ける歴史的な「沸騰する夏」だったことがわかった。EUの気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス（C3S）」の発表によると、9月の平均気温は16.38℃で、これまで最高だった2020年の気温を0.5℃上回った。C3S所長のカルロ・ブオンテンポ（Carlo Buontempo）氏は「気候の観点でこれまでで最も驚異的な夏だった。気候変動は10年後に起こる何かではなく、今ここにある」と指摘している。
4カ月連続で月平均気温が過去最高を記録したことで、9月も「夏」に組み込まれた形だ。さらに今年は、年間を通じても最も暑い夏になる可能性が一段と強まった。9月の平均気温16.38℃は、1940年までさかのぼる観測記録の中で「最も暑い月」となった。産業革命前の1850～1900年の9月の平均気温よりも1.75℃高かったという。
今年1月以来、9月までの平均気温は、これまでの平均より0.52℃高く、同期間では過去最も暑かった2016年の気温よりも、0.05℃高かった。さらに産業革命前と比べても、今年は1.40℃高かったことになる。
海洋の温度も、9月は北緯60°から南緯60°間の平均気温は20.92℃となり、9月としては過去最高気温となった。またすべての月平均でみても、2023年の8月に次ぐ月別第2位の海温上昇だった。海温上昇には、東太平洋の赤道付近で発生するエルニーニョ現象の影響が今年は大きいのと、気候変動の影響とが重なって、増大したとみられる。
同月の南極洋（現在冬季）の海氷は、過去最小の水準となっているほか、月平均、日平均の海氷の拡大も、衛星観測データでは過去最小の展開にとどまっている。南極の月平均の海氷拡大は平均より9%少ない水準となっている。一方、北極圏の海氷は年間で過去6番目の低いランクの水準。月平均の海氷の広がりも、平均より18%少ない過去5番目の小ささという。
雨量も9月は各地で豪雨が相次いだ。欧州の西岸の海岸線添いの西イベリア半島、アイルランド、北イングランド、スカンジナビア諸国等の多くの地域で平均より多い月だった。9月初めには、ギリシャではストーム「Daniel」の影響で24時間に750mmにも達する豪雨が発生し、同国中部を中心に15人が死亡した。
同ストームについては世界気象機関（WMO）が、地中海（メディトレーニアン）とハリケーンを合わせて「メディケーン」と命名した。その強力な影響はギリシャ以外の他国にも及び、北アフリカのリビアでは中旬に、大雨の影響で2つのダムが決壊。8000人以上の人々が犠牲になる事態が起きた。ブラジルや南チリでも豪雨が続いた。
リビアでの大量の水災死の原因については、軍事紛争が続く同地域でのインフラ整備の遅れも指摘されている。だが、例年を上回る気温上昇が続く中で、地中海の湿気を十分に吸い込んで肥大化したメディケーンによる従来の常識を大きく上回る規模の豪雨が、一度に都市部を集中的に襲ったことで、ダムが決壊したとみられている。気候変動の影響が地域の気候条件の激変を招来した事例とみられている。
日本の9月の平均気温も、平年を2℃以上も上回り、気象庁が統計を取り始めた125年間で最も高かった9月となった。日本の9月の平均気温は平年と比べて2.66℃高く、7月、8月の過去最も暑い気温月に続き、過去最も暑い9月となった。
平年との比較は、東日本以降ほど気温が高く、北日本と東日本は平年より3.1℃高く、西日本は2.3℃高かった。沖縄・奄美では0.8℃。都市別では、仙台市や長野県松本市が平年より3.9℃高く、東京の都心も3.4℃高かった。9月として過去最高となった地点は全国153か所のうち111か所に達した。「夏」の範囲が9月にまで延びた状態だった。
https://climate.copernicus.eu/copernicus-september-2023-unprecedented-temperature-anomalies
https://climate.copernicus.eu/european-summer-2023-season-contrasting-extremes
Research Institute for Environmental Finance