HOME8.温暖化・気候変動 |2022年の世界のGHG排出量、前年比1.2%増、過去最高の574億㌧。2030年までに「1.5℃」を上回り「2.5~2.9℃」上昇。日本の「排出量ギャップ」は15%。UNEP調査(RIEF) |

2022年の世界のGHG排出量、前年比1.2%増、過去最高の574億㌧。2030年までに「1.5℃」を上回り「2.5~2.9℃」上昇。日本の「排出量ギャップ」は15%。UNEP調査(RIEF)

2023-11-21 22:24:32

 

  国連環境計画(UNEP)は「2023年版・年次排出量ギャップレポート」を公表した。それによると、2022年の世界全体での温室効果ガス(GHG)排出量は前年比で1.2%増加し、過去最高の574億㌧に達した。このままのペースの排出増が続くと、各国が現状の排出削減目標を達成したとしても、世界の平均気温は今世紀末には産業革命前に比べて、2.5℃~2.9℃上昇し、パリ協定の目標(1.5℃)を大きく上回ると警告している。「1.5℃」目標の達成のためには、2030年には世界全体で43%の削減が必要と指摘、各国の削減目標の改めて上積みするよう求めている。

 

 「2023年のギャップ」レポートは「壊れたレコード(Broken Record)」と題し、副題として「気温上昇は新記録を更新、しかし、世界はGHG排出削減に失敗している(再び)」としている。気温上昇が進行するのに、世界各国は削減強化ができず、壊れたレコードのように「気温上昇の更新と、排出削減の失敗」を繰り返している、という皮肉が込められている。

 

1990年~2022年の人類起源の各温室効果ガスの排出量推移
1990年~2022年の人類起源の各温室効果ガスの排出量推移

 2015年のパリ協定では、世界全体のGHG排出量を2030年には16%増に抑える前提で、世界の平均気温上昇を産業革命前に比べて「2.0℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する」との目標を設定した。今回のレポートでは、現行の各国政策の継続では、目標の排出量は16%より3%増となると指摘。ネットゼロに向けた「1.5℃目標」達成には、2030年の排出量は現状より42%減に、「2.0℃目標」達成には、同28%の削減が必要とした。

 今月末からドバイで開く国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)において、現行の各国が決める削減目標(NDCs)を2035年目標として新たに改定・強化し、「1.5℃目標」「2.0℃目標」と整合させるよう求めている。「壊れたレコード(現行のNDCs)」を、新しいレコード(2035年目標)に切り替え、「ギャップ」を埋めるようとの要請だ。

 昨年のCOP27以来、9カ国がNDCsを改定あるいは新規提出し、現在のNDCs提出国は149カ国となっている。これらの国々が提出したNDCs通りに国内の排出削減を実行すると、2030年までに、当初のNDCsよりも年間5.0G㌧の追加的CO2削減が可能としている。各国公約のNDCsと、実際の各国の政策とのギャップ(Implementation gap)は、G20(主要20カ国)ベースでは4%だが、主要国では、カナダは27%、米国19%とギャップが大きい(政策が不十分)。韓国(18%)に続いて日本も15%と二ケタのギャップになっている。EUは加盟国全体で9%。

主要国のNDCsと実際の政策効果との排出量ギャップ推計
主要国のNDCsと実際の政策効果との排出量ギャップ推計

 ロシア、トルコ、インドネシア、メキシコの4カ国は、NDCsより実際の政策による削減量が上回っている。ロシア等のNDCsについては、当初提案自体が甘い内容だったとの指摘もある。

 今年9月時点で、世界の排出量の81%に責任を負う97カ国がNDCs及び長期目標でネットゼロ達成を法的に位置付けている。前年の88カ国に比べ9カ国、増えている。世界の排出量の76%を占めるG20諸国ではメキシコ以外のすべての国がネットゼロ目標を設定している。

 UNEP事務局長のInger Andersen氏は「(NDCsの改定という)変化は、経済全体を巻き込んだ低炭素発展への展開の形で、エネルギー・トランスフォーメーションに集中し、これまで以上に迅速に進められねばならない。歴史的なGHG排出に責任を負い、削減能力の高い国々(先進国)は、従来以上に野心的行動をとり、途上国に対して金融と技術の両面で支援する必要がある。世界の排出量の3分の2強を占める低中所得国は、エネルギーへの普遍的なアクセスを確保し、数百万人を貧困から脱却させ、戦略的産業の拡大につながるような低炭素型成長に適合していくべきだ」と述べている。

https://www.unep.org/resources/emissions-gap-report-2023

https://wedocs.unep.org/bitstream/handle/20.500.11822/43922/EGR2023.pdf?sequence=3&isAllowed=y