HOME |地球全体の気温上昇の影響で、南極上空の「極渦」が崩壊の可能性。「冬の南極」は熱波発生で、25℃~30℃の気温上昇に。南極海の海氷減少による気候変動の負の連鎖が顕在化か(RIEF) |

地球全体の気温上昇の影響で、南極上空の「極渦」が崩壊の可能性。「冬の南極」は熱波発生で、25℃~30℃の気温上昇に。南極海の海氷減少による気候変動の負の連鎖が顕在化か(RIEF)

2024-08-15 13:09:16

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 過去最高の暑さが地球全体を包んでいる。その中でも現在、冬である南極は25℃~30℃もの記録破りの気温上昇が注目されている。気象専門家によると、「暑い冬の南極」が出現している最大の要因は、南極圏の上空を循環する冷たい寒気の渦である「極渦(きょくうず : Polar Vortex )」が崩壊している可能性があるためという。同現象は平均20年に一度の頻度でしか発生しないとされるが、今回は、気候変動の進展が影響しているとの指摘が増えている。気象専門家は、「今回の南極の熱波は記録的で、長期的に何が起こるかを示す重要なシグナル」とみている。

 

 (写真は、衛星がとらえた南極の様子=New Scientistから転載)

 

 現在、北半球とは逆に冬となっている南極で、平均気温が25℃~30℃もの急上昇が起きているが、南極の冬の平均気温は零下約50℃~60℃なので、海氷や氷河が溶ける水準にはまだ達していない。

 

 英科学メディアのIFLScienceによると、極渦は、冬の間、北極と南極の両極の上空を循環する成層圏の強い気流で、極地の上空に冷たい空気を閉じ込める。ジェット気流は、この極域の寒気が中緯度地域に広がるのを防ぐバリアの役割を果たす。ただ、両極上空の成層圏の温度と気圧が急激に上昇し、極渦の流れが不安定になると、分裂、方向転換、崩壊といった「異常現象」が起きることがある。そうなるとジェット気流の流れが歪んで、両極の風の流れが変化し、暖かい空気が極域に引き込まれる現象が起きる。それが現在、冬の南極で起きている可能性があるとみられている。

 

変化する極渦㊨と、安定的な極渦㊧
変化する極渦の影響㊨と、安定的な極渦㊧(北極のケース)

https://www.iflscience.com/somethings-going-on-with-the-polar-vortex-and-it-could-have-consequences-75509

 

 専門家の間で「突発的成層圏温暖化(SSW)」とされるこの現象は、2019年に北極で発生し、米国の中西部等の地域で発生した「Big freeze」を引き起こした。また2024年初めには、成層圏気圧の変動が北極渦の方向を2度変え、北半球に寒波をもたらした。

 

 一方、南極での極渦の変化については、2002年に一度発生したことが唯一、知られるという。しかし、今年の夏は、南極の極渦が「分裂した」可能性が指摘されている。まず7月に入って同極周辺の成層圏の温度上昇から、同月中旬には、渦の風速が通常の時速300kmから230kmにまで減速したことが確認されている。この減速は同時に、南極周辺の平均気温を約20℃も引き上げる気温急上昇を伴った。

 

 この段階ではSSWを引き起こすまでには至らなかったが、8月上旬になって再び気温が上昇し、2度目の減速が起こったとされる。この影響で、南極の冷たい空気が極域から抜け出し、周辺のオーストラリア、ニュージーランド、南米の一部で、雨と氷に覆われる気象変化を引き起こした。同時に、中緯度からの暖かい空気が南極大陸に南下し、南極全体に記録的な熱波を引き起こしているという。


 今後、南極の極渦がどう変化していくかは、専門家も予想がつかない状況にある。モデル分析では、極渦はすぐに安定するとの予測もあれば、急激に崩壊するという予測結果も出ているという。最悪のシナリオでは、不安定化したジェット気流が「南半球環状モード(southern annular mode)」と呼ばれる別の気象システムを混乱させ、南半球全体の気象変化を狂わせる可能性があるとしている。そうなると、今後、春から夏に向かうオーストラリアや南米等では、異常に乾燥した暑い気候になる可能性がある。

 

「最後の審判の日の氷河」と呼ばれるスウェイツ氷河=CNNより
「最後の審判の日の氷河」と呼ばれるスウェイツ氷河=CNNより

 

 米海洋大気局(NOAA)によると、南極の気温上昇の影響を受ける形で、すでに7月の南極海の海氷域面積は平年を76万平方㍄ほど下回り、過去2番目に少なかった。地球上の氷の大半は南極大陸に蓄えられており、仮にそれがすべて溶けると、世界の平均海面水位は約45m以上も上昇する。「ドゥームズデー(最後の審判の日)氷河」と呼ばれる南極大陸西部のスウェイツ(Thweites)氷河が溶けると70cmの海面上昇が起き、さらに周辺の氷河の融解連鎖によって海面上昇は約3mとされる。https://rief-jp.org/ct8/147879

 

 スウェイツ氷河は米フロリダ州ほどの大きさで、南極西部に位置する。同氷河が海面に流れ込む際に、張り出した棚氷はコルク栓のような役割を果たし、氷河を陸地に押しとどめるとともに、海面上昇に対する重要な防御も担っているが、同氷河の棚氷は昨年、棚氷の下部の深い割れ目や「階段状」の形状部分で氷河全体の融解スピードを大きく上回るスピードで融解が進行していることが報告されている。

 

 南極の極渦が不安定化する原因は不明だが、気象学者の多くは人為的な要因による気候変動の影響が及んでいる可能性を示すデータが増えていると指摘する。最近のモデル分析では、南極の海氷の減少が対流圏の定常波を変調し、南極の成層圏への上向きの惑星波の伝播を促進するとの結果が報告されている。https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/2023GL107478

 これまで気候変動進行の懸念として、北極海の海氷の急激な減少への懸念が示される一方で、南極の海氷は比較的安定していると考えられていた。だが、ここ数年の観測で南極海の海氷も減少傾向にあることがわかっている。両極の海氷が極端な流動状態にあることが、両極の極渦の変動を引き起こし、それがさらに周辺への気候変動激化の要因になるという、負の連鎖が顕在化しつつあるのかもしれない。

https://www.iflscience.com/somethings-going-on-with-the-polar-vortex-and-it-could-have-consequences-75509

https://www.newscientist.com/article/2443183-the-antarctics-polar-vortex-could-be-about-to-split-in-two/

https://www.severe-weather.eu/global-weather/polar-vortex-collapse-event-2024-february-cold-weather-pattern-shift-united-states-fa/

https://www.cnn.co.jp/fringe/35222570.html