2024年の世界の平均気温15.10℃。産業革命前の気温の推定値を『1.60℃』上回り、初めて年間でパリ協定目標の「1.5℃」突破。EUの「コペルニクスネットワーク」公表(RIEF)
2025-01-10 23:51:43
EUの気候監視ネットワーク「コペルニクス気候変動サービス(C3S)」によると、2024年の世界の平均気温は15.10℃で、1991年から2020年の平均気温を0.72℃上回り、これまでで記録上最も気温が高かった2023年を0.12℃上回った。産業革命以前の気温とされる1850年から1900年の気温の推定値を1.60℃上回ったことに相当する。したがって、24年は産業革命以前の気温を「1.5℃以上」上回った最初の暦年だったことになる。
気温の上昇は、24年一年だけのことではない。過去10年間(2015年~2024年)でみても、観測史上最も気温の高い10年間のうちの1つに相当する。また24年1年間のうち11カ月間は、月ごとの世界平均気温が産業革命以前の水準を1.5℃上回った。さらに2023年7月以降のすべての月(2024年7月を除く)が月単位で1.5℃を上回った。
同センターでは、24年の平均気温上昇の要因として、人間の経済活動から排出される温室効果ガス(GHG)排出増による気候変動が異常な大気中の気温上昇、および海面温度の上昇の主な要因となっていると指摘している。また、東太平洋赤道付近で発生するエルニーニョ南方振動(ENSO)などの他の要因も、異常高温が続く要因になったとしている。
C3Cの気候変動サービスディレクターのカルロ・ブオンテンポ(Carlo Buontempo)氏は、「国際的に作成された地球全体の気温データセットはすべて、2024年が1850年に記録が始まって以来最も暑い年であったことを示している。人類は自らの運命を担っているが、気候変動への対応は、根拠に基づいて行うべきだ。未来は私たちの手の中にある。迅速かつ断固とした行動によって、未来の気候の軌道を変化させることはまだ可能だ」と述べた。
欧州中期気象予報センター(ECMWF)の気候戦略リーダーであるサマンサ・バージェス(Samantha Burgess)氏も「過去10年間の毎年は、記録上最も温暖な10年のうちの1つ。われわれは今、パリ協定で定められた『1.5℃』のレベルを超える瀬戸際に立たされている。過去2年間の平均気温はすでにこのレベルを超えている。こうした高い世界気温と、2024年の世界では記録的な大気中の水蒸気レベルが相まって、前例のない熱波や豪雨をもたらし、何百万人もの人々に苦しみをもたらした」と、気温上昇が気候変動を増大させ、実被害を拡大していることを強調した。
産業革命以前の気温を1.5℃以上上回った2024年全体を振り返ってみると、同年を含む過去10年間(2015年~2024年)は、いずれも観測史上最も気温の高い10年間のうちの1つだった。24年1年間のうち11カ月間は、月ごとの世界平均気温が産業革命以前の水準を1.5℃上回った。さらに2023年7月以降、24年末までのすべての月(2024年7月を除く)が1.5℃を上回った。
24年7月22日には、日ごとの世界平均気温の新たな最高記録が更新され、17.16℃となった。また24年は、南極とオセアニアを除くすべての大陸地域、および海洋の広範囲にわたる地域、特に北大西洋、インド洋、および西太平洋で最も気温の高い年だった。
2024年には、その年の同じ時期の気温として、3つの記録的な高温の季節が観測された。すなわち、北半球の冬(2023年12月~2024年2月)、北半球の春(3月~5月)、北半球の夏(6月~8月)のそれぞれが、1991年から2020年の平均値を0.78℃、0.68℃、0.69℃上回った。
2024年上半期の1月~6月までの各月は、記録のあるどの年にも対応する月よりも暖かかった。下半期では8月を除く7月から12月までの各月は、その時期としては23年に次いで2番目に暖かかった。24年8月は、記録のある中で最も暖かい月として23年8月と並んだ。
海面の水温の上昇も記録的な年だった。24年には、極域外の海洋における年平均海面水温(SST)が20.87℃という記録的な高さに達し、1991~2020年の平均値を0.51℃上回った。24年1月から6月までの期間における極域外の海面水温の平均値は、記録的な高水準となり、23年下半期に見られた記録的な高温月から連続的に海面水温の上昇がみられた。24年7月から12月までの下半期における海面水温は、同時期としては23年に次いで2番目に高い値となった。24年は、23年に始まったエルニーニョ現象が終息し、よりニュートラルな状態、またはラニーニャ現象の状態へと移行した。
この記録的な世界の平均気温の上昇によって、激しい暴風雨や洪水から熱波、干ばつ、山火事等の異常気象が世界中で観測された。異常気象の頻度と強度の増加は、世界中の人々の生活に重大なリスクをもたらしている。24年には、大気中の水蒸気総量が1991年から2020年の平均値を約5%上回る過去最高値に達し、23年よりも大幅に増加しました。この豊富な水分供給により、異常な量の降雨の可能性が高まった。さらに、高い海面水温による影響もあって、熱帯低気圧を含む大型の台風・ハリケーンの発生増につながった。
C3Cでは、気温の上昇は、体がオーバーヒートによるストレスを受ける状況につながる可能性があると警告している。さらに気温だけでなく、湿度などの他の環境要因も熱ストレスに影響を与える可能性があり、24年には、地球の大部分で、少なくとも「強い熱ストレス」の日数が平均を上回った。一部地域では「極度の熱ストレス」の日数が平均を上回り、このレベルでは熱中症を避けるための対策が不可欠となった。
いくつかの地域では、長期にわたる乾燥期間により山火事が発生しやすい状況が生まれた。大規模で長期にわたる山火事が南北アメリカ大陸で記録された。まさに現在、カリフォルニア州で猛威を奮っている山火事もその一つだ。山火事によるCO2排出量は、ボリビアとベネズエラが記録史上最高レベルを記録、カナダは2番目に高いレベルを記録した。
欧州にとっても24年は観測史上最も気温の高い年となり、平均気温は10.69℃。1991年から2020年の基準期間の平均を1.47℃上回った。2020年に記録した前回の記録を0.28℃上回った。
南極大陸周辺では、海氷の張り出しが、23年の8か月間、その時期としては記録的な低値を記録した後、24年の大部分の期間に再び記録的またはそれに近い低値を記録した。6月から10月にかけての月ごとの面積は、23年に次いで2番目に低く、11月には最低値を記録した。2月の年最小値では、衛星観測史上3番目に低い面積だった。
北極の海氷域面積は7月までは1991年から2020年の平均値と比較的近い値だったが、その後の数か月間は平均値を大幅に下回った。9月の年間最小値では、月間面積は衛星観測史上5番目に低い値だった。
大気中のCO2とメタン濃度は増加を続け、24年にはそれぞれ422ppm(百万分の一)と1897ppb(十億分の一)という記録的な年間レベルに達した。24年のCO2濃度は23年より2.9ppm高く、メタン濃度は3ppb高かった。
https://climate.copernicus.eu/copernicus-2024-first-year-exceed-15degc-above-pre-industrial-level