北極海の海氷面積。今月(3月)は最大となる月なのに、観測史上最小の面積だった。過去の最小記録を更新。昨年の気温上昇の影響か。ここにも気候変動「顕在化」の実例(RIEF)
2025-03-29 21:25:21

北極海の海氷面積は3月に最も拡大するが、今年の3月は衛星観測に切り替わってからの47年間で最小の面積だったとみられる。米コロラド大学ボルドー校の国立雪氷データセンター(NSIDC)によると、この冬の北極海の海氷面積が最大になったとみられる3月22日の面積は1433万k㎡で、観測史上でこれまで最小とされてきた2017年3月7日の1441万k㎡より8万k㎡下回った。
NSIDCの上級研究者のウォルト・マイヤー(Walt Meier)氏は「この新たな最小記録は、北極海の海氷が過去数十年間で根本的に変化したことを示すさらなる指標だ。しかし、最小記録更新よりもさらに重要な点は、今年、北極海の海氷が冬も含めて、すべての季節において長期的に減少を続けているというデータが新たに加わったということだ」と指摘している。
北極海の海氷面積の最小値が過去もっとも小さかったことに続いて、南極の海氷面積の最小値も3月1日に198万k㎡となり、衛星観測史上で2番目に低い年間最小値を記録した。NSIDCの科学者たちは、北極海の海氷面積の数値は暫定的なものであり、気象条件によって年間最大氷面積が変化する可能性がまだあると述べている。

正式な確定データは4月初旬に詳細な分析結果とともに公表される予定という。北極海の冬の氷は通常、3月に最も広範囲に広がり、その後、春から夏にかけてゆっくりと融け始め、9月には最小面積にまで縮小するパターンを毎年、繰り返す。今回のデータは暫定的なものだが、変更される可能性は低いとされる。
2024年の世界の平均気温は過去最高を記録、産業革命前以来の気温の上昇も、パリ協定の抑制目標の「1.5℃」を上回る「1.60℃」と過去最高の上昇を示した。気温の上昇は海温の上昇も伴い、南北両極地域の海氷の減少につながったとみられる。また海氷が減少すると、海氷によって反射されるはずの太陽光エネルギーが、海洋中に吸収され、より多くの熱を海洋にため込むことになり、さらに海氷が融解するという「フィードバックループ現象」を加速させるとみられている。https://rief-jp.org/ct8/152827?ctid=70
コネチカット大学の気候科学者、ペニー・ブラホス(Penny Vlahos)氏は「毎年、北極海に蓄積される熱の量は増えている。例えるなら、北極は私たちのクーラーの氷だ。クーラーの氷がなくなれば冷蔵機能が失われる。まさに今、われわれに、それが起こっている。北極と南極の氷はわれわれのシステムにおける緩衝材であり、それが失われれば、より極端な気象に見舞われることになる」と指摘している。
北極海の海氷の減少は、北極海がより多くの船舶や潜在的な軍事利用に開放される地政学的および安全保障上の影響ももたらす。昨年の北極海航路を通過した貨物輸送量は、約3800万㌧とされる。このままの温暖化が進めば、2030年には倍の7000万㌧から1億㌧に拡大するとみられている。経済的なメリットが高まるとみられる一方で、ロシア軍が極東に移動し易くなることにもつながる。
https://nsidc.org/news-analyses/news-stories/arctic-sea-ice-hits-record-low-maximum-extent-year