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潘基文前国連事務総長、英国の輸出信用保証庁(UKEF)の途上国向けの化石燃料事業資金支援の停止を要望。「パリ協定と整合せず」。日本のJBIC、NEXIも同様の課題(RIEF)

2019-02-26 15:55:26

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  前国連事務総長のバンキブン(潘基文)氏が、英政府に対して、英輸出信用保証庁(UKEF)による海外の途上国向けの石油・ガス開発事業等への信用供与を停止するよう要請した。日本でも国際協力銀行(JBIC)や日本貿易保険(NEXI)による途上国エネルギー事業への信用供与のあり方が問われているが、潘氏は英国にも同様の課題があるとしている。「この問題はメイ政権にとって、気候変動への英国の貢献を測るテストとなる」と指摘している。

 

 潘氏は英ガーディアン紙へ寄稿した。同氏の指摘によると、英国は2010年から2014年の間、英国のUKEFはその信用補完供与の大半(99.4%)を石油・ガス等の化石燃料開発事業に投じてきた。再生可能エネルギー事業には1%にも満たない。

 

 より期間を延ばした2010年から16年の間に、UKEFが化石燃料事業に供給したファイナンス額は48億ポンド(約7000億円)。ほぼ同期間(11年~17年)の気候変動関連の国際事業へのファイナンス額490億ポンドとほぼ拮抗している。

 

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 同氏は「これらの数字と英国政府の政策をみると、英政府がパリ協定で公約した自国の温室効果がス削減計画と、海外での開発支援とが整合していると考えることは難しい」と指摘した。潘氏は国連事務総長としてパリ協定の取りまとめに力を注いだだけに、英国の「言動不一致」の対応に我慢ができないとの立場だ。

 

  そのうえで、「英国は世界全体の利益のために、これまでの政策を転換する時期に来ている」と、UKEFの化石燃料事業支援を中断するよう求めた。さらに、英中央銀行のマーク・カーニー氏が金融安定理事会(FSB)議長として、気候変動が金融リスクを引き起こす要因になり得ることを警告していることにも言及、自らの中央銀行の警告にしっかりと耳を傾けるよう要請した。

 

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 潘氏は2016年末の国連退任後、特定の国の気候変動問題にコメントすることはほとんどなかった。したがって、今回の発言について、メイ政権がブレグジットで身動きがとれない中での気候対策での厳しい指摘に、真意を量りかねる向きもある。あるいは、ブレグジッットで身動きが取れない中でこそ、気候変動対応で思い切った策を打ち出して、英国がリーダーシップ発揮する機会を示したとの見方もある。

 

 英議会でUKEFの石油ガス事業に多雨する資金供給インパクトの調査委員会議長を務めるMary Creagh議員は、「潘氏の指摘は正しい。UKEFの海外での石油・ガス事業への資金支援は、英国の気候変動対策と整合性がとれていない」と賛同している。野党労働党は、労働党が政権を取り戻したら、UKEFの資金供給の方向を低炭素エネルギー事業に180度転換させる、と”公約”した。

 

 不意に潘氏から攻撃を受けた形となったUKEFのスポークスパーソンは「英国政府の優先課題は、国内外を問わず、英国企業の国際的ビジネス機会の獲得を奨励することにある。海外のパートナーと有意義な関係を構築し、世界中の経済成長に貢献することにある。環境、社会そして人権リスク等のマネジメントには高い水準でコミットしている」との公式コメントを語っている。

 

https://www.theguardian.com/world/2019/feb/24/ban-ki-moon-uk-must-stop-investing-in-fossil-fuels-in-developing-countries