HOME |シンガポールの全電力の4分の1を、オーストラリアの太陽光発電電力でカバー。3800kmの距離を直流ケーブルで送信。総額2.2兆円。豪州は「再エネ電力」を新たな輸出資源に(RIEF) |

シンガポールの全電力の4分の1を、オーストラリアの太陽光発電電力でカバー。3800kmの距離を直流ケーブルで送信。総額2.2兆円。豪州は「再エネ電力」を新たな輸出資源に(RIEF)

2019-07-15 09:10:39

Suncableキャプチャ

 

 アジアの中核に位置するシンガポールに、3800km離れたオーストラリアから太陽光発電電力を供給する大規模太陽光発電プロジェクトが進行している。総額200億㌦(約2兆2000億円)を投じ、豪州北部州で開発した太陽光発電電力を直流ケーブル(HVDC)でシンガポールに供給する大事業だ。発電容量は最終的に10GWと世界最大になる見込み。

  事業主体はシンガポールに拠点を置くサン・ケーブル(Sun Cable)社。シンガポールは国内の電力の95%を輸入天然ガスに頼っている。しかし、天然ガス需要の高まりによる値上がり傾向と、相場変動による影響を常に受けるという課題がある。

 そこで同社は、豪州で発電した太陽光発電電力を直流の海底ケーブル(送電容量2.5GW)で直接引き込んで、電力消費全体の4分の1に相当するCO2フリー電力を安定的に提供する計画を進めている。

Suncable2キャプチャ

 発電する場所は、豪州北部のノーザン・テリトリー州のテナント・クリークという町の周辺の1万5000haの砂漠地帯。同地に、豪州の5B社製の一基3㌧のプレ組み立て式太陽光モデュール(Maverick)を工期25日という超短期間で設置することを目指す。

 発電電力量は、当面は3GW、最終的に10GWに拡大する計画だ。蓄電設備も併設することから、安定的に送電できる。発電した電力は一部、同州の州都ダーウィンにも供給するが、大半は、シンガポールに輸出する。現在、ノーザン・テリトリー州と環境面での承認作業を行っているという。

 サン・ケーブルの計画では、州の環境面での了解を得ると、地域住民を対象としたコンサルテーションを2020年にも実施する予定。順調に進むと、2023年に事業に着工、2027年に電力供給を開始できるとしている。同事業により、約8000人の地域雇用を創出できる、としている。

ギガ太陽光発電所を建設する予定の地は、現在は荒れ地の砂漠地帯
ギガ太陽光発電所を建設する予定の地は、現在は荒れ地の砂漠地帯

 サン・ケーブル社のDavid Griffin社長は「金融面については2023年に決めたい」と語っている。事業規模の大きさから、国際的な金融機関よるプロジェクトファイナンスか、あるいはグリーンボンドの発行で投資家資金を獲得することが考えられる。

 ユニークなのは、5B社製のプレ組み立て式の太陽光発電モジュールの活用だ。同モジュールは1ブロックが、幅5m、長さ16m(32モジュール)あるいは同20m(40モジュール)の大きさ。工場で事前に装備されたモジュールのブロックを、現地でつなぎ合わせる。2.1MWの発電設備の場合、62ブロックを3人の技術者が25日で、つなぎ合わせることができるという。工期とコストの短縮が可能になる。

  豪州では他の地域でも大規模な太陽光発電計画が進行している。西豪州のピルバラでは、発電総量15GWの大規模再エネ発電計画(Asian Renewable Energy Hub)がある。太陽光発電と風力発電をミックスし、発電電力を日本を含むアジア諸国に販売する計画を立てている。

 自然資源の豊富な豪州は、グローバルな温暖化対策の進行で石炭輸出の先行きに黄色信号がともっている。天然ガスも豊富だが、2050年のカーボンゼロを想定すると、現在人気の天然ガスも、中間的な役割にとどまるとの見方が少なくない。

 

 しかし、同国には豊富な日照と広大な用地という「資源」もある。これらを活用した再生可能エネルギー発電を低コストで安定的に開発できれば、低炭素経済社会でも「資源大国」として活躍できることになる。

https://www.suncable.sg/

https://www.pv-magazine-australia.com/2019/06/26/pre-assembled-concept-proposed-for-10-gw-northern-territory-pv-project/