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欧州議会、次期欧州委員長に独のフォンデアライエン氏選出。気候変動対策を重視。2050年に「カーボンニュートラル(CO2排出量ネットゼロ)」宣言。カーボン国境税導入や、1兆ユーロの投資等(RIEF)

2019-07-17 14:17:25

EUキャプチャ

 

  欧州議会は16日、次期欧州委員長にドイツの現国防相のウルズラ・フォンデアライエン氏を賛成多数で選出した。同氏は採決を前に行った議会演説で、欧州を2050年までに「カーボンニュートラル(CO2排出量のネットゼロ)大陸」にするとの目標を掲げ、その実現のために「欧州グリーンディール」のロードマップを就任後100日間で打ち出すと明言した。欧州投資銀行(EIB)を、気候銀行(Climate Bank)に改組し、今後10年にかけて、1兆ユーロ(約125兆円)を気候変動対策に投じる決意を示した。

 

 気候変動への対応が、欧州委員長選出の決め手になったのは初めてといえる。採決は賛成383票対反対327票で、その差6票。承認に必要とされる374票をわずか9票上回るだけという僅差だった。最大会派の「欧州人民党」(EPP)、自由主義会派に加え、社会民主進歩同盟(S&D)と緑の党が支持に回った。

 

 S&Dは支持の理由として「フォンデアライエン氏は、われわれが気候変動危機に直面し、気候関連法制やカーボン税等の緊急措置が必要との認識した」点を最優先に指摘した。加えて、EU域内の失業保険制度や最低賃金の引き上げ、大IT企業課税、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を含めた安定成長協定の弾力化、サステナビリティと社会的正義の尊重等にも合意したとしている。

 

 フォンデアライエン氏は、議会演説で2050 年までに「クラメートニュートラル大陸」を実現するため、就任100日で整備するグリーンディール政策において、特に金融面からのアプローチを重視し、Sustainable Europe Investment Planを打ち出すと述べた。同時に、EIBをそうした投資戦略の柱に据えるため、「Climate Bank」に改組する。

 

 CO2削減目標では、現在のCO2排出削減目標の2030年40%削減目標について、当初、50%への引き上げを提案した。その後、S&Dや緑の党との協議を重ねる中で、55%削減に合意する考えを示していたが、最終的には「2030年目標は55 %、あるいは50%」と目標を両方併記する「2ステップアプローチ」を示した。https://rief-jp.org/ct8/91729

 

 また、CO2削減の目標達成のために、排出されるカーボンに価格付けをすることの重要性を強調。EU-ETS(排出権取引制度)を現行の産業以外にも拡大して汚染者負担原則を貫くとともに、カーボン国境税の導入にも言及した。これはEUと同等レベルの温暖化対策をとっていない国からの輸入品等について新たに課税する制度で、日本企業も対象となる見込みだ。

 

 フォンデアライエン氏は現在ドイツ国防相で7人の母。現委員長のジャンクロード・ユンケル氏は10月31日に退任。翌11月1日にフォンデアライエン氏が就任する。

 

https://www.climatechangenews.com/2019/07/16/climate-plays-decisive-role-ursula-von-der-leyen-annointed-eu-chief/