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メルケル独首相。「温暖化の危機に、私の全エネルギーをかけて対処する」と新年演説。「今、政治が何もしないと、子どもたちや孫たちがすべての影響を受ける」。政治の責任を強調(RIEF)

2020-01-01 00:10:35

 

  ドイツのアンジェラ・メルケル首相は12月31日、国民向けに演説し、「温暖化による危機は人類が引き起こした」と指摘。「今、政治が対応しないと、その影響を受けるのは、われわれの世代ではなく、子どもたちや孫たち」、「ドイツが気候変動を制御するために貢献できるよう、私は全エネルギーをかける」と決意を表明した。

 

 メルケル首相の発言は、国民向けの新年メッセージとしてテレビ放送された。この中で首相は、デジタル化の進展で課題となっている雇用問題に対処する決意とともに、気候変動への対応に力点を置いて語った。

 

 気候変動については、トランプ米大統領を筆頭として、グローバルベースでも、オーストラリア、ブラジルなどの国の政治リーダーの間に、温暖化懐疑論が根強くある。

 

Merkel4キャプチャ

 

 同首相はこうした一部の疑念を意識したうえで、「われわれの地球が温暖化しているのはリアルな現実だ。温暖化による危機は人類が引き起こしたものだ。人類が原因となって、人類を危機に直面させているからこそ、人類があらゆる力を発揮してこの問題に対処しなければならない。その対処はまだ可能だ」との認識を示した。

 

 ドイツ政府は、こうした認識に基づいて、温暖化対策の新たな政策手段をとりまとめている。鉄道利用や暖熱セクター等にカーボン価格制度を導入、自動車や航空機利用からCO2排出量の少ない鉄道利用を促すため、長距離鉄道運賃の付加価値税引き下げ等を実施する。ただ、同政策を巡っては国内での異論も少なくない。

 

 温暖化対策のためとはいえ、そこまでまだやる必要はないのでは、といった時期尚早論だ。首相はドイツ国民の間にも、そうした異論があることを認めたうえで、「しかし、必要なフレームワークだ」と強調した。

 

Merkel3キャプチャ

 

 「私は65歳だ。私の世代は、今、政治家が何も行動しなかった場合に生じる気候変動のすべての結果を受けることはないだろう。結果を受けるのは、われわれの子どもたちであり、孫たちの世代だ。私は、子どもたちや孫たちがそうならないように、ドイツが気候変動を制御するために、環境的にも、経済的にも、社会的にも貢献できるよう、私の全エネルギーをかけていく」と宣言した。

 

 EUの欧州委員会委員長には、新たに、メルケル氏の信頼の厚い前ドイツ国防相のウルスラ・フォンデンライエン氏が就任、「欧州グリーン・ディール(EGD)」を提唱している。2020年後半はドイツがEUの議長国にもなる。こうした政治環境も念頭に置いて、メルケル首相は「欧州は世界にもっとその声を伝えねばならない」とも述べた。

 

 トランプ政権の米国がパリ協定から公式に離脱し、英国がEUからの離脱もほぼ確定する中で、気候変動対応を推進する軸と、EUの軸を、ドイツが「責任をもって担っていく」との決意が浮き出た演説といえる。

 

 メルケル首相は2005年以来、首相の座にある。18年10月の独地方選挙で、自らが率いるキリスト教民主同盟(CDU)が敗北したことで、2021年の任期満了をもって首相の座を退くことを明言している。