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南極で気温18.3℃記録。観測史上最高を更新。温暖化の影響とフェーン現象で過去の最高気温を0.8℃も上回る。WMO(世界気象機関)が公表(RIEF)

2020-02-11 07:27:43

Antartic1キャプチャ

 

 世界気象機関(WMO)によると、南極半島北端の Esperanzで6日、観測史上で最も高い18.3℃が観測されたと発表した。暖かい風が山を越えて吹き降ろす「フェーン現象」が起きたとしている。これまでの最高気温は2015年の17.5℃。南極は地球上で最も温暖化が速く進んでおり、過去50年間で気温はおよそ3℃上昇している。半島の西海岸にある氷河は過去50年間で87%が溶けてなくなっている。南極の氷河・氷床が全て溶けると、地球全体の海面は約60m上昇する計算だ。

 

 南緯60℃以南の南極圏という範疇では、過去最も気温が高かったのはサウス・オークニー島にある小島のシグニー島。1982年1月に19.8℃を記録している。今回のEsperanzでの記録は、南極大陸に限定した最高記録となる。

 

 オーストラリア・ウェリントンのビクトリア大学の気候科学者、James Renwick教授は、WMOの臨時委員会のメンバーも務める。彼は2015年の最高記録を評価した立場でもある。同氏は「今回の記録について確認のため委員会が再招集されるだろう。もちろん観測所は問題なく機能しており、最高気温として認められよう。気になるのは、5年を経て、記録が更新され、しかもほぼ1℃近い上昇だったということだ。南極では地球全体の平均よりもはるかに速いスピードで温暖化が進行していることを示すサインだ」と述べている。

 

Antartic3キャプチャ

 

 ただ、今回の最高気温更新は、強い北西の風が山を越えて吹き降ろしたフェーン現象の影響という地域特有の状況も加味されていることを指摘している。しかし、そうした複合要因を考慮したとしても、大気中の温室効果ガスレベルの上昇によって地域の気象特性に影響が及んだことは否定できない、としている。

 

 またオーストラリア・ナショナル大学の気象科学者、Nerilie Abram教授は、同半島にあるJames Ross島での観測の結果として、「同地域一帯は非常に早く気温が上昇する地域だ。時にはTシャツ一枚でも過ごせる場合がある」と明かす。同教授は2012年からの研究の成果として、現在の同地域の温暖化の水準は、過去2000年でもっとも高い水準にあると指摘している。

 

 その影響について同教授は「たとえ、小さな気温上昇でも、南極の氷を溶かすようなエネルギーの増大につながる可能性がある」と指摘する。すでに気温上昇の影響で、半島沿いの氷棚の崩壊が生じているという。氷棚はすでに海に浮いているで、崩壊しても海面上昇に直接結びつくわけではないことは知られている。

 

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 「しかし」と教授は語る。「氷棚は一種の『プラグ』のような役割を果たしている。氷棚は南極大陸を覆う氷床を安定的に維持することに役立っている。氷棚の崩壊が氷床の不安定化を高め、氷床の溶解を進めると、海面上昇につながる」と。

 

 オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の海洋学者の Steve Rintoul博士は「今回の観測は1地点でのデータだが、他の地域でも同様の温度上昇が起きている可能性を示している。地球全体はより暖かいところが増え、寒いところはより減少していることの証拠だ」と指摘している。

 

 南極でのもっとも低い気温は1983年7月21日にロシアの南極基地の Vostok基地で観測されたマイナス89.2℃。その後33年間も記録は更新されていない。年間の平均気温は沿岸部ではマイナス10℃、内陸部ではマイナス60℃。


  
 南極の巨大な氷床は深さ4.8kmの厚さにまで積み重なっている。その量は世界の淡水の90%を占めるという。仮に、これらの氷床がすべて溶けた場合、地球全体の海面は約60m上昇するとされている。

https://public.wmo.int/en/media/news/new-record-antarctic-continent-reported