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独アウディ、電気自動車(EV)の生産工程でもネット・カーボンニュートラルを実現。ライフサイクルで「ネットゼロ車」を実現することで、脱炭素の電動車競争の主役確定を目指す(RIEF)

2020-12-18 23:54:35

Audi001キャプチャ

 

 独フォルクスワーゲングループのアウディは生産工程でのカーボンニュートラルを確保した電気自動車(EV)の生産を始めた。EVをめぐっては、走行時のCO2排出量はゼロだが、ライフサイクルでみた場合のCO2排出量が多いとの指摘もある。アウディのカーボンニュートラルEVは、グリーン電力と再生可能エネルギー源からの熱を利用して製造することから、製造時も基本的にCO2ゼロを達成できるという。

 

 (写真は、アウディの「フル・カーボンニュートラルEVの「e-tron GT」)

 

 ネット・カーボンニュートラル生産を実施するのは、アウディのバーデン=ヴュルテンベルク州ネッカーズルムのベーリンガーホフ工場(Böllinger Höfe)。製造を始めたEVは、Audi e-tron GT。同工場は、現在、プラグインハイブリッド車の生産拠点でもあり、アウディの生産拠点のなかでも電動化モデルの割合がもっとも高いことで知られる。

 

 同工場はすでに今年の初めに、工場の生産プロセス全体を、ネット・カーボンニュートラルに切り替えている。生産拠点全体の使用電力を再エネ由来のグリーン電力とし、さらに生産時に必要な熱を供給する熱電供給プラントは、バイオガスを燃料としている。これらの再エネだけでカバーしきれない部分は、カーボンクレジットの購入で相殺する。

 

Audi002キャプチャ

 

 アウディAGの生産・ロジスティクス担当取締役のペーター・ケスラー氏は、「すでにわれわれは、ブリュッセルとジェール工場でカーボンニュートラル生産を実現しているが、今回、ドイツ国内のアウディ生産拠点で初めて、製造工程のフル・カーボンニュートラル化を実現した。2025年までに全世界でカーボンニュートラル化を達成するというわれわれの道のりの重要なステップだ」と強調している。

 

 同社が取り組んでいる「Mission:Zero」と名付けた環境プログラムは、カーボンフットプリントを、生産工程においても効果的かつ持続的に実現するため、生産とロジスティクス分野での対策を組み合わせている。脱炭素化だけではなく、資源効率性、生物多様性、水の使用等でも革新的ソリューションを取り入れている。

 

 EVのネット・カーボンニュートラル実現は、電力・熱源のCO2排出量をゼロにするだけではない。生産プロセスでの工夫として、車のボディのアルミニウムフレームの加工技術に、車体用に切断されたアルミニウムシート端材をリサイクルして再使用する仕組みも取り入れている。これによって、工場全体の廃棄物を減らし、CO2排出量も年間数千㌧減少できるという。

 

 このアルミ端材の再利用工程は、プラスチックのリサイクルにも応用できるという。現在、別途、進めているパイロットプロジェクトでは、A6およびA7のプラグインハイブリッドの組立作業から出るプラスチック端材を再処理することで、特殊な繊維に再生しているという。

 

 EVのCO2排出量をめぐっては、日本車が強いハイブリッドとの比較で、ライフサイクルCO2排出量の課題が指摘されてきた。しかし、今回のアウディのカーボンニュートラル製造工程の実現は、これまでの議論に終止符を打つものになりそうだ。ただ、100%グリーン電力や再エネ熱利用、さらにカーボンクレジット等の購入によって、トータルコストが高くなるリスクはある。コストをどこまで引き下げられるかが、残る課題のようだ。Audi e-tron GTは2021年春から受注を開始する。

https://www.audi-mediacenter.com/en/press-releases/audi-e-tron-gt-enters-series-productioncarbon-neutral-production-begins-at-the-boellinger-hoefe-13473