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EU欧州委員会副委員長からオランダの次期首相を目指すティメルマンス氏。擁立する中道左派「PvdA ・グリーン連携」が世論調査でトップに。急成長の農業政党との連携がカギ(RIEF)

2023-08-16 12:35:09

timmarmanキャプチャ

 

  オランダの首相選挙に名乗りを上げるため、EU欧州委員会の筆頭副委員長(気候変動担当)を辞任したフランス・ティメルマンス(Frans Timmermans)氏を擁立する中道左派のPvdA (S&D Group)とGroenLinks (グリーン党)の両党へのオランダ国内での支持率が、トップとなったことがわかった。両党合わせた支持率は18.5%で、昨年の総選挙時より7.6%増。2割弱の支持率だが、同国では連立政権が常道となっているので、11月に予定される総選挙に向けて、各党調整の主導権を取れる可能性が出ている。

 

写真は、支持者らと話し合うティメルマンス氏㊧=Euractivより)

 

 ティメルマン氏は7月に欧州委副委員長の座を降りた。同氏はEUの気候政策責任者として国際的な気候外交での調整役としても大きな存在感を放ってきた。現在のフォンデアライエン委員長の欧州委員会自体、来年6月に任期を迎えることから、これまで前任のユンケル委員長時代を含め、2委員会連続で副委員長を務めてきたティメルマン氏の再々任はないことから、早期退陣を決め、国内政治への復帰を決断した。https://rief-jp.org/ct5/137551?ctid=

 

 今回、世論調査「Europe Elects」が7月中旬に実施した分析によると、ティメルマン氏を擁立する2政党への支持率は明確に上昇したことがわかった。7月に首相を辞任した自由民主国民党(VVD)のマルク・ルッテ(Mark Rutte)氏は13年にわたって首相を務め、連立政権が常態化している同国で、もっとも在任期間の長い首相だった。しかし、同国への難民流入抑制策をめぐって連立与党間での協議が決裂したことで、内閣総辞職に至った。

 

 ティメルマンス氏は、ルッテ政権で2012~2014年に外相を務めた経緯もある。世論調査では、ルッタ氏所属のVVDへの支持率は15.6%で、6.3%の減と、PvdA/GroenLinksとは明確に明暗を分けている。ただ、PvdA/GroenLinksがこのままリードを保てるかは微妙だ。

 

 台風の目となっているのが農業団体等で組織するBBB。同政党は2019年に設立されたFarmer-Citizen Movementが母体。世論調査では、前回から13.9%の急増で、VVDに迫る14.9%の支持を得ている。同党は右派系のポピュリスト政党で、3月の地方選挙では、VVDを抑えて19/9%の得票率でトップとなり、137の議席を獲得した。ティメルマンスを支持するPvdA/GroenLinksは、わずか0.32%の得票率で、議席数は6つだけ。

 

 コミュニティベースの地方選挙と国政選挙では有権者の選択が異なるが、BBBは11月の次期総選挙でもPvdA/GroenLinksを上回るとの見方も出ている。いずれにしろ連立政権となるが、BBBは農家・農業政策を重視する視点で、環境関係ではルッタ政権が掲げた、農家が使用する肥料に含まれる窒素酸化物規制に反対したほか、動物愛護団体との対立も続いている。

 

 同党の気候変動政策は明確ではないが、農業、畜産業による環境汚染等をめぐり、PvdA/GroenLinksと政策的に対立する可能性は高い。肥料等の窒素使用問題は、サステナビリティ課題でもある。気候対策・環境保全を政策公約の重要な柱とするPvdA/GroenLinksにとって、BBBとの連立は容易ではないとの見方もできる。

 

 そんな展望の中で、世論調査で「首相候補」の一人としての支持を一応、得た形のティメルマンス氏が、これまでの内外の政治体験で培った抜群の調整力でオランダ政界をまとめることができるかどうか。注目し続けたい。

https://www.euractiv.com/section/elections/news/dutch-snap-election-polls-suggest-swing-to-centre-left-under-timmermans/