米環境保護庁(EPA)。すでに配分済みのバイデン前政権時の低所得者コミュニティ向け太陽光導入プログラム助成金を打ち切る方針を示したことに対し、環境団体等がEPAと長官を提訴(RIEF)
2025-10-08 02:00:18
米国の2026年会計年度の予算成立をめぐる連邦議会での共和・民主両党の対立の要因の一つであるバイデン前政権時の環境・脱炭素化プロジェクトに対するトランプ政権による資金停止・引き揚げ等の措置が法廷で争われることになった。環境保護庁(EPA)が8月に、インフレ抑制法(IRA)に基づく低所得者向けの太陽光発電導入プログラムについて、すでに配分決定済みの事業を含めて、助成金を停止を打ち出したことに対して、環境保護団体、労働組合、非営利団体等が6日、「EPAの措置は違法だ」として裁判所に提訴した。提訴の理由は、EPAが2024年に約60の非営利団体、部族、州などに対し、IRAに基づいて支給を決めていた 助成金を、遡る形で取り消したことは違法だと主張している。
提訴は、ロードアイランド州連邦裁判所に対して行われた。争点は、2024年にバイデン前政権下でのEPAが、IRA法に基づいて法的に義務付けた資金提供計画の一つである低所得者コミュニティ向けのクリーンエネルギー普及計画「ソーラー・フォー・オール(Solar for All)」プログラムの助成金70億㌦を、トランプ政権になってEPAがすでに配分済みの助成金を含めて、打ち切った措置をめぐる法的議論だ。
訴訟の原告には、環境団体だけでなく、コミュニティに関係する労働組合のロードアイランド州 AFL-CIO、非営利団体ロードアイランド司法センター、太陽故発電事業者のソーラー・ユナイテッド・ネイバーズ、ピッツバーグを拠点とする太陽光発電設備設置業者 Energy Independent Solutions、インディアナ州の非営利プロジェクト Black Sun Light Sustainability、ジョージア州の企業 Sunpath Solar、同じく2KB Energy Services、ジョージア州の Solar For All プログラムを通じて太陽光発電設備の設置を申請したアトランタの住宅所有者の個人、アン・グエン(Anh Nguyen)氏等が含まれる。

バイデン前政権時のEPAは、2022年に成立したIRAに基づいて、2023年から「Solar for All」プログラムを立ち上げ、全米の特定州、先住民・アラスカ先住民、複数州プログラム等を代表する最大60件の助成金の交付を実施した。プログラムの目的は、低所得者層や恵まれない地域社会が、分散型住宅用太陽光発電を含むゼロエミッション技術を導入する恩恵を受けることを可能にし、また家庭のエネルギーコストの削減や公共料金の支払不能リスクの低減等にも資するとしていた。
プログラムの資金はすべてが、最も支援を必要とする低所得者層や恵まれないコミュニティの支援に割り当てられる形となった。同プログラムをすべて展開すると、恩恵を受けた平均的な低所得世帯は、電気代を年平均約400㌦節約できたとされた。助成金の配分に際して、EPAは競争的な審査プロセスを実施し、助成金受給者を選定、各受給者と契約を結んで、受給者の作業計画を承認する手順をとった。
しかしトランプ政権に代わった7月、連邦議会が「一つの大きくて美しい法律(One Big Beautiful Bill(OBBB)」を成立させた。これにより、米国のエネルギー政策は、太陽光発電等の再エネ事業から距離を置き、従来型の石油・ガス等の化石燃料の継続を柱とする方向に大きく舵を切った。このOBBBを受けて、EPAはゼルディン長官が主導する格好で、8月に「Solar for All」プログラムの終了を打ち出した。EPAのこの措置は新規の助成金供給の停止だけでなく、すでに配分決定済みの助成金についても停止する内容とした。https://rief-jp.org/ct8/158713?ctid=
ただ、OBBBでは、温室効果ガス削減基金の大半の廃止を盛り込んだが、「Solar for All」プログラムへの遡及的廃止は含めていない。この点で原告らは、OBBBは同プログラムの廃止を含んでいないうえに、連邦議会が同法に基づいて取り消したのは「未義務付け残高」のみであり、EPAが同プログラムですでに交付した義務付け済み資金70億㌦の全額は、すでに配分が義務付けれている、と指摘。
したがって、現在のEPAと長官が、議会の指示通りに同プログラムの資金を配分せず、8月に入って、急いで同プログラムを終了させたのは、法律に基づくものではなく、違法だと指摘している。さらには、こうしたEPAによる違法なプログラム終了措置が容認されるならば、米国の全州・全領土のコミュニティにおいて、低所得世帯約100万世帯が、手頃な値段でレジリエンスの高い太陽光発電へのアクセスを失うほか、同プログラムが対象とした低所得・恵まれないコミュニティでは、同事業に伴う数十万もの高賃金・高品質な雇用が失われる、と批判している。
被告は組織としてのEPAと、その代表の長官、リー・ゼルディン(Lee Zeldin)氏。EPAは同プログラムを8月に終了措置をとったことから、ゼルディン氏は「もはやこの無駄遣いを継続するためのプログラムや予算を管理する法定の権限は自分にはない」と反論しているという。
これに対して、太陽光エネルギー産業協会上級副社長のステファニー・ボッシュ(Stephanie Bosh)氏は、議会がすでに承認した助成金をEPAが法的権限なく取り消すことはできないと指摘。「これらの助成金は、共和党支持州と民主党支持州を問わず、数十億㌦の投資をもたらしている」と述べている。
ただ、EPAが8月にプログラムの終了を宣言した段階で、民間調査会社の集計として、70億㌦の助成金のうち、実際に使われたのは5,300万㌦だけで、助成金の配分決定を受けた多くの団体等がプログラムの計画段階という状況との報道もある。政権が代わることで、法律に基づく前政権の政策を継続するか、あるいは廃止するかの是非が問われる形だが、どちらにしろ、トランプ氏が自画自賛するOBBB(一つの大きくて美しい法律:One Big Beautiful Bill)の「美しさ」よりも、「粗さ」が引き起こした訴訟といえそうだ。
(藤井良広)
https://www.clf.org/wp-content/uploads/2025/10/SFA-stampled-complaint-102025.pdf
https://apnews.com/article/trump-solar-clean-energy-epa-zeldin-19c838ee2d9be3e80aadb5dfe0526891

































Research Institute for Environmental Finance