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京町屋版「ビフォーアフター」、再生事業で高級宿に-投資収益80%も(Bloomberg) 伝統の資産を、新たに資産運用する

2012-11-20 11:22:00

街並みも蘇り、景気も良くなる
 11月20日(ブルームバーグ):天井の穴から光が差し込むだけの薄暗い部屋は臭気が立ち込め、床は霜で覆われていた-。古民家再生を手掛ける庵(京都市下京区)の黒木裕行取締役が4年前、京都を訪れた当時、西陣にある築約80年の京町屋は半ば廃屋と化していた。それが今では1泊最高8万4500円の宿泊施設に生まれ変わっている。京町屋netによると、10年前は数軒だった京町屋の宿は現在、100軒超に増えた。

街並みも蘇り、景気も良くなる


古民家を改修して、宿や住居として甦らさせる再生ビジネスが軌道に乗り始めている。日本の伝統建築を見直す気運の高まりが背景にあり、事業としての収益性も高い。人口流出や高齢化に悩む地方の町では、観光客を誘致し、町おこしに生かそうとする取り組みも出ている。

漆喰壁に漆黒の格子が特徴的で、京都の古い街並みに溶け込む京町屋。同市の定義では、「1950年以前に伝統的木造軸組構法で建てられた木造家屋」とされる。持ち主の高齢化で空き家化したり、都市開発の波で取り壊されるなどで、軒数は減る一方だ。同市都市計画局の調査では、現在市内に残る京町屋は約4万8000軒あるが、96年以降で少なくとも7%に相当する3566軒が建替えや取り壊しとなった。

庵が町屋から改修した宿は全部で12軒あり、ホームページによると、コンセプトは「京都を暮らすように旅する」。黒木氏は「家の主人がかつて見ていた景色、昔住んでいた景色をお客さんに味わってもらっている」と話す。高い宿泊料もグループ利用(定員2-14人)ならば割安とあって、人気を呼んでいる。1軒貸し切りのため個室型のホテルなどよりも稼働率は低いが、それでも50%程度を維持しているという。

同市内で60年前から不動産仲介業を営む八清(同市下京区)も、10年ほど前から京町屋の仲介・改修に乗り出した。現在は事業の約8割を京町屋が占め、過去3年間の改修・売却件数は約200件に上る。

廃屋がゴールドに

八清は、明治以降に建築された京町屋の改修・個人への売却も行っている。同社の松本和也氏は、インタビューで「京町屋の売却額は1000万円程度から億を超えるまでさまざまだ」と語る。松本氏は、誰も見向きもしなかった町屋を外国人が購入し、「商売になる」と気付いたという。同社は2011年に50件の売却を手掛けた。

古民家再生ビジネスの収益性が高いのは、伝統建築の良さが見直されているのと同時に、コストが安いという点にある。米国人で東洋文化研究家のアレックス・カー氏は、「築200、300年の木造家屋をほとんどただで手に出来る」とし、「100年後に古民家が保存されていればみんな喜ぶはずだ」と語る。同氏は64年に12歳の時に父親の転勤で来日、日本の家屋や文化に惚れ込んだ。京都のほか、徳島県でも古民家の再生に関わっている。

富士山を見渡せる山梨県の精進湖の集落で古民家の再生・売買を行うアメリカ人、ジェイコブ・ライナー氏。古くて誰も住んでいない家には「大きな価値が備わっていて、地元の人たちはそれを見逃している」とし、古民家再生は「廃棄されたものをゴールド(金)に変えたようなものだ」と語る。

同氏は古民家の再生を個人向けに数件手掛けている。現在は年3棟のペースでの対応が可能だが、将来的には10棟まで増やすことを目標にしている。築150-200年の古民家を500万円程度で買い取ったうえで、500万円で改修すれば1500-1800万円で売却可能という。収益率は最高80%に上る計算だ。自己資金だけでなく、数人の投資家からも資金を集め、16%もの高リターンを実現した。

日本の歴史的建造物は国内外で評価されている。世界の文化遺産の保護・保全活動を行い、米国ニューヨークに拠点を置くワールド・モニュメント財団は、世界危機遺産のリストに京町屋を選び保存のために活動中だ。また、日本民家再生協会の金井透事務局長は、かつては古い家屋は敬遠されがちだったが、「ここ数年で人々の意識は変わってきた」とし、日本人自身も古民家を再評価していると話す。

町おこし

古民家への高い関心に期待を寄せて、町おこしに取り組む地方自治体も出てきた。長崎県の五島列島の北部に位置する小値賀町は、自然環境や世界遺産暫定リストに入っている隠れキリシタンの教会のたたずまいが魅力となり、観光客を引き寄せている。

同町役場・産業振興課の橋本博明氏によると、島にある古民家を観光資源として注目し、カー氏にプランニングを依頼したという。従来は1泊6000円くらいで民家に宿泊する観光客が多かったが、古民家を改装して1泊1万5000円前後の宿泊施設にすることで、「外国人や富裕層など別の客層を呼び込む狙いがある」としている。

新たな客層の呼び込みは経済効果につながる。町の観光消費額は08年度は約2億9000万円から10年度には3億3200万円に増加、さらに13年度にはさらに1億円の増加を見込んでいる。橋本氏は「観光が産業として成り立てば島に仕事も出来て、島から出て行くこともなくなってくるだろう」と期待を寄せる。

京都市では、古民家の保存再生に向けて、住民も立ち上がっている。市民・企業からの寄付金、京都市や国からの資金によって運営されている「京町屋まちづくりファンド」は05年に設立され、これまでに64件の町屋の改修を助成した。

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 桑子かつ代 kkuwako@bloomberg.net;東京 Kathleen Chu kchu2@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先:Andreea Papuc apapuc1@bloomberg.net

 

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MC9ZGU6JTSE801.html