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奴隷制の賠償金、カリブ14カ国が挑む計算の難しさ (WSJ) 777兆ドルの試算も

2013-10-29 18:26:29

英リバプールの国際奴隷博物館に展示されている奴隷用の拘束具
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英リバプールの国際奴隷博物館に展示されている奴隷用の拘束具 .
英リバプールの国際奴隷博物館に展示されている奴隷用の拘束具
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多くの経済学者、歴史家、活動家が解けなかった1つのパズルの答えを、カリブ海の14カ国と英国の法律事務所が出そうとしている。それは、奴隷制度がもたらした苦痛に対する代償をいかに計算すべきか、だ。

 カリブ共同体の加盟国は国際司法裁判所への提訴に向け、ロンドンの法律事務所レイ・デイを採用した。現在にまで及んでいる奴隷貿易の影響について、英国、フランス、オランダに補償を求める計画だ。4世紀に及んだ奴隷貿易では、数百万人が自らの意思に反してアフリカから欧州の植民地に連れてこられた。

補償の請求には法律面で大きな困難が伴う。大昔に亡くなった人たちによって─そして、大昔に亡くなった人たちに対して─行われた犯罪を証明しなくてはならないためだ。

 

 だが、それにも増して難しいのは金額の算出かもしれない。奴隷制度や米国の南北戦争後の人種偏見に対する補償を求める活動を受け、学者たちは補償額を計算しようとしてきた。得られなかった賃金を計算する方法から、奴隷制度が原因と考えられる健康格差を計算する方法まで、さまざまなアプローチがある。結果は実にさまざまで、その多くが莫大(ばくだい)な金額だったことが補償請求の妨げになっている。

 レイ・デイを設立したパートナーのマーティン・デイ氏によると、依頼人はカリブ諸国の現在の住民に及んでいる奴隷制度の影響を書類にまとめる作業をしている。奴隷制度下で資産を蓄積できなかったことによる経済的影響、奴隷が強いられた食生活のせいで糖尿病率が高まり、それが数世代続いていることだ。デイ氏はこれらに対する補償を足し合わせた金額は「わからない」と述べた。

 フランスのオランド大統領は補償を拒否した際、奴隷制度のコストを計算することが無益だと指摘している。奴隷制度の犠牲者をしのぶ演説では、「完了することが不可能であろう計算過程に(歴史を)従わせることはできない」と述べた。

 一方、英国の外務英連邦省(FCO)の報道官は「われわれは補償が答えだとみていない」と話した。

 オランダの外務省の報道官は「オランダ政府は奴隷制度の歴史について遺憾の意を示してきており、それにより過去(の出来事)による不公平を認識してきた」と語った。

 エコノミストのジュリアン・サイモン、ラリー・ニール両氏は1974年、補償の金額を試算した。米国の奴隷が自由市場で稼げていたかもしれない賃金の合計を計算し、奴隷の扶養代を加味。そして、その差額がその後に生み得た利息を算出しようとした。労働力が拡大した状態でも賃金に市場原理が働いていたかどうかなど、多くの仮定が必要だった。最も重大な仮定は金利だ。6%だと、コストの合計は3%の場合より100倍多くなる。両方の結果が示されたが、両氏によると大きい方の数字は「天文学的で、ほとんど意味がない」という。

 補償を求める人への反対意見では、こうしたさまざまな数字や計算方法が使われている。ガーナの団体「African World Reparations and Repatriation Truth Commission」は1999年、アフリカ大陸への補償として777兆ドルを求めた。同年の米国内総生産(GDP)の約70倍に当たる金額だ。現在この団体やメンバーは所在不明だ。だが、実現できない補償を求める主張は今も時折みられる。

 こうした試算は、ジョージタウン大学のリチャード・アメリカ非常勤教授の言う「政府や主要研究機関が奴隷制度のコストを計算していれば存在しなかった空間」を埋めている。

 同氏は、まずコストを計算した上でそれとは別に救済策を求めることを提唱、訴訟ではなく政策変更によって達成されてほしいと望んでいる。「何もないところから生みだされる挑発的な数字が必要であれば」、米国の黒人の場合、奴隷制度とその後の人種偏見に対するコストは差し引き20兆ドルだとみている。

 もっと最近の非道行為の加害者は被害者に支払いをしている。英政府は今年、1950年代に植民地のキャンプで虐待を受けたケニア人に約2100万ドルを支払うことに合意した。ドイツはナチスの犯罪の犠牲者に900億ドル以上を支払ってきた。

 こうした展開は、カリブ諸国のために働くデイ氏の励みになっている。ただ、同氏は「簡単なケースだとは一瞬たりとも思っていない」と付け加えて述べた。

 カリブ諸国の政府がどうやってコストを計算するかは不明だ。デイ氏は「いかなる種類の数字も明かさない」と述べた。

 

http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702303925304579162900934558922.html?mod=djem_Japandaily_t