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国連「緑の気候基金(GCF)」事務局長ポストに日本が名乗り。気候変動交渉担当代表の菅沼健一氏。先進国と途上国の資金協力を巡り、前任者は途中辞任の「難職」(RIEF)

2018-12-18 22:51:03

suganuma1キャプチャ

 

   国連「緑の気候基金(Green Climate Fund)」の事務局長(Executive Director) ポストに、日本政府が菅沼健一・気候変動交渉担当政府代表を擁立した。GCFは、国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)でも最大の議論となった先進国から途上国への資金協力の重要機関。前任事務局長は、この夏、内部対立を受け、任期半ばに辞任している。

 

 GCFは、途上国の温室効果ガス削減対策と気候変動の影響への適応策を資金面から支援するため、2010 年のメキシコ・カンクンでのCOP16で設立が合意された。2015年から稼働している。韓国仁川市ソンドに拠点を置く。

 

 運営の代表者である事務局長は今年7月までオーストラリア出身のHoward Bamsey氏が務めていた。オーストラリアで長年、エネルギー・環境分野の政策官僚として活躍、気候変動・エネルギー効率化省の事務次官を務めたベテランだが、理事会後に突然辞任を表明、以後、空席になっている。http://rief-jp.org/ct8/80684

 

GCF2キャプチャ

 

 Bamsey氏は辞任理由を明確にしなかった。だが、先進国と途上国の対立の激化で、嫌気を差したとみられている。今回の日本政府の「名乗り」の理由について外務省は、「我が国はGCFに15億㌦を拠出し、意思決定機関である理事会にも積極的に貢献している。2020年以降の温室効果ガス削減のための国際的な枠組であるパリ協定の本格運用に向けて,GCFの役割は益々重要」と述べている。

 

 

 GCFによる事務局長の公募期間は先週の12日に締め切られている。日本以外の応募があったかどうかは不明。政府は、来年2月26から28日まで予定される第22回GCF理事会で、菅沼氏を次期事務局長に選出されるよう、今後、各国の支持を得る活動を展開するとしている。

 

 GCFには、日本のほか欧米諸国など43カ国(うち9カ国は途上国)と都市・地域(パリ市、ベルギー・フランダース政府等)が拠出を表明、拠出表明総額は約103億㌦となっている。ただ、最大の30億㌦を出資する予定だった米国は、オバマ前政権時に10億㌦を出資した後、トランプ政権は拠出を凍結しており、15億㌦の拠出を表明している日本が実質的に最大の出資国の座にある。

 

 外務省関係者は「日本はGCFの最大の出資国として、GCF組織のスムーズな運営について、国際社会のためにも、また国内の納税者のためにも、最大の責任を負っていると言える」と述べている。

 

 事務局長候補の菅沼氏は、これまでウィーンやジュネーブ国際機関の日本政府代表部を務めてきたほか、第3回国連防災世界会議担当大使、駐ブルネイ、駐スリランカの両大使などを務めてきた。「途上国の実情にも詳しく、幅広い経験を保有し、気候変動対策支援の鍵を握るGCFの事務局長に相応しい」(外務省)と強調している。

 

 ただ、前任者の退任「事件」を振り返るまでもなく、途上国のプロジェクトに対する資金配分を巡っては、途上国同士の対立もあり、事務局による各国間の調整は容易ではない。またトランプ政権が棚上げした20億㌦分を、先進国間でどう分担するか、という大きな課題もある。まさか、菅沼事務局長を実現するために、日本が全額引き受ける大盤振る舞いに出るとは思えないが・・・。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_006817.html