RIEF論文:「気候変動における不確実性問題:気候感度に関する最新の科学的知見を中心に」(明日香壽川東北大教授)
2017-02-23 15:44:04
気候変動問題を科学的に研究・検証する際、「不確実性」の問題が浮上する。気候変動自体が人類の経済活動に加えて複数の要因が影響するほか、将来の温暖化の影響を評価しなければならないためだ。こうした「不確実性」の要因の存在に対して、われわれは謙虚でなければならないが、同時に「不確実性」の存在をもって、温暖化対策の緊急性や必要度を軽減するような近視眼的な姿勢も排除しなければならない。
東北大学東北アジア研究センターの明日香壽川教授は、この気候変動問題における不確実性問題に焦点を合わせた「気候変動における不確実性問題:気候感度に関する最新の科学的知見を中心に」と題するペーパーをまとめた。
明日香教授は、「数年前から、日本でも“最新のIPCCC第5次評価報告書や科学的知見に基づいて”という理由付けで、温室効果ガス排出経路の計算に用いる気候感度(大気中の二酸化炭素濃度が二倍になった時の気温変化量)の最良推定値の下方修正の必要性や短期的な排出削減の不要性を示唆する議論があるほか、政府も『温暖化対策計画』に『気候感度に不確実性がある』という一文を入れるなど、ことさら不確実性を強調するようになってしまっている」と警告する。
さらに「『科学の不確実性』を理由に規制を忌避しようとするのは、かつてのタバコ会社によるものなどがあり、いわゆる常套手段」とも指摘している。本ペーパーは、一時話題になったハイエタス(1998年からの気温上昇の停滞)の評価なども、わかりやすく解説している。