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旅行大手のH.I.S.が宮城・角田市で開発中のパーム油燃料のバイマス発電事業に、中止・撤退を求める署名内外から約15万通。海外旅行のH.I.S.らしく海外65カ国からも署名(RIEF)

2019-08-02 00:11:10

HIS1キャプチャ

 

 旅行大手エイチ・アイ・エス(H.I.S.)社が宮城県角田市で建設中のパーム油を燃料としたバイオマス発電所事業について、中止・撤退を求める署名約15万件が、環境NGOらの手で同社に届けられた。国内だけではなく、米、独、英、インドネシアなど、65カ国からも署名が届けられ、海外旅行で知られるH.I.S.のブランド力への疑問が広がった形だ。

 

 H.I.S.は、グループ会社のH.I.S.SUPER電力が、宮城県角田市で、今年秋の試運転開始を目指して、バイオマス発電所を建設中。同発電所は、東南アジア等からパーム油を輸入して燃料とする計画で、輸入するパーム油については経済産業省が固定価格買取制度(FIT)の適用条件としたRSPO認定の燃料とするとしている。設備出力は41.1MWで、年間発電量は35万MWhの予定。

 

 これに対してFoE Japan、プランテーション・ウォッチ、熱帯林行動ネットワーク(JATAN)などの環境団体らは、同発電所が完成すると発電時に年間7万㌧のパーム油を燃やすことになる点を問題視。パーム油の原料となるアブラヤシの生産地マレーシア、インドネシアでは、広範囲にわたる熱帯林および泥炭地の破壊により、野生生物の生息地が失われ、大量のCO2が発生する。

 

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 また、パーム油は主に加工食品等に使われる植物油で、これらを「発電用」に大量に燃やすと、RSPO認証のパーム油を使うとしても、さらなる熱帯林破壊をもたらす懸念がある、としている。こうしたことから環境団体は5月に同社の澤田秀雄社長宛に、抗議文書を送った後、同社と意見交換を求めたが断られたため、事業を停止するよう求める署名活動を展開。署名分は郵送したという。https://rief-jp.org/ct4/89627

 

 FoE Japanの満田夏花事務局長は「パーム油による発電は、熱帯林開発圧力となり、生物多様性や気候変動に脅威を与える。私たちはたびたびこれらの問題をエイチ・アイ・エスに訴えてきた。しかし、工事は開始されてしまった。エイチ・アイ・エスは15万人近くにも及ぶ人たちの懸念の声にこたえるべき」と述べている。

 

バイオマス産業社会ネットワークの泊みゆき理事長は、「(H.I.S.が売電に利用する)FITは、私たち電力消費者の賦課金で成り立っている。パーム油に限らず、膨大な排出効果ガスを生み出すバイオマス発電を、FITで支えることは説明がつかない」と指摘している。

 

 環境NGOらは、経済産業省委託の調査文書で、「森林減少や泥炭地開発などによる温室効果ガス排出を除いても、栽培・加工・輸送にかかるパーム油による発電の温室効果ガス排出はLNGに匹敵する」との結果が示されているとも指摘している。「バイオマス燃料の安定調達・持続可能性等に係る調査報告書」(2019年2月 )p.112)

http://www.foejapan.org/forest/palm/190730.html