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カトリックのフランシスコ法王、アマゾン問題を協議する3週間の「司教会議(シノドス)」をスタート。ボルサナロ政権側は警戒(RIEF)

2019-10-07 08:33:50

Pope2キャプチャ

 

  カトリック教会のフランシスコ法王は6日、ブラジルやペルーなどアマゾン流域各国の司教や司祭や、アマゾンの先住民代表らを招待した3週間の司教議(Synod)をスタートさせた。会議は法王の主導で設定されたもので、世界最大のカトリック国であるブラジルでこの夏、発生した大規模な森林火災を環境面、宗教面の両面から議論し、解決策を目指す。

 

 今回の司教会議は、「アマゾン周辺地域のための特別シノドス」と呼ばれる。会議は一昨年から進められてきたが、今年、急増した森林火災でアマゾンの生態系全体の危機が表面化したことで、注目される形となった。テーマはアマゾン周辺地域としているが、同時に、その考察は地域を超え、全教会ならび地球の未来と関わりを持つもの、との位置づけだ。

 

 現実的には、アマゾンの環境保全の危機を招来したブラジルのボルサナロ大統領の政策力と、地球全体の未来を憂うフランシスコ法王の指導力との調整がどう進むかがポイントになりそうだ。

 

Pope43キャプチャ

 会議に参加する司教や司祭が属する国々は、ブラジル、ペルーのほか、エクアドル、コロンビア、ベネズエラ、ガイアナ、スリナム、仏領ギアナのアマゾン流域各国をはじめ、世界全体から184人の司祭・牧師らを招聘した。これらの司教・司祭は会議の決定に対して投票権を有する。
 一方、35人の修道女、尼僧も参加するが投票権は与えられていない。アマゾン流域で生活する先住民の代表17人(うち女性9人)も参加する。

 カトリックの司教会議は長い歴史を持つ。だが特定の地域やテーマではなく、エコシステムを課題として議論をするのは、今回が初めてとされる。

 

ブラジルの先住民族は生活の場でもあるアマゾン熱帯林の保全を要請
ブラジルの先住民族は生活の場でもあるアマゾン熱帯林の保全を要請

 2013年に法王に就任したフランシスコ法王は2015年6月、世界に向けて温暖化対策を求める「回勅」(Laidato Si’:http://rief-jp.org/ct8/52657)を出した。さらに16年には、地球温暖化の加速をはじめとする人間の活動が原因の環境問題を「人類の罪悪(sin)」と位置づけるメッセージを出すなど、一貫して温暖化・環境問題への人類の取り組みを求めている。

 

 今夏、世界的に話題となったアマゾン熱帯雨林の火災拡大問題は、そうした「人類の罪悪」を象徴するものともいえる。「地球の肺」と呼ばれるアマゾン森林の大気浄化力を大幅に削ぐ森林火災の広がり、それも多くが農地確保のための意図的な火災や違法な放火によるものとみなされている。

 

 森林火災の拡大は、ボルサナロ大統領が就任後の農業開発政策によって後押しされたとの見方が多い。南米カソリック教団のFather Peter Hughes氏は「われわれは非常に重要な局面にいる。グレタ・ツゥーンベリさんの行動のように、われわれは運動を始める必要がある」と強調している。

 

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 3週間に及ぶ今回の司教会議で法王は、もっぱら各国、各宗教指導者の代表らの意見を聴くことに集中する。単に現状報告を聴くのではなく、それぞれの代表の思いとカトリックの教えとの関係について語ることが求められるという。

 

 アマゾンを対象とした教会会議の開催に、ブラジル政権は警戒感を高めている。同国は世界でもっともカトリックの信者数が多い。仮に、ボルサナロ政権を批判するような結論が出ると、同政権の支持基盤にも影響を与える可能性があるからだ。

 

 このため、政権内部からはすでにバチカン批判の声があがっている。政権の教育アドバイザーであるFederal University of Espírito Santo 教授のRicardo da Costa氏は「教会がこうした環境活動家のような対応をとるのは、左翼的アジェンダと言わざるを得ない」と批判している。「聖職者は人々の魂の救済を気にするべきで、森林保全を気にするべきではない」。

 

 こうした批判の背景には、フランシスコ法王がアルゼンチンの出身で、初の南米選出の法王ということも影響している可能性も指摘されている。カトリック教会内の保守派は、特に法王の環境問題への傾斜に批判的だ。「教会は教会の問題に留まるべき」とのスタンスだ。

 

 しかし、法王は断固として、気候変動問題を最重要課題の一つに位置付けている。気候変動は人類全体への脅威であり、人間の尊厳への挑戦である、との判断だ。法王は、この問題を自らの法王職にとっての中心課題との認識を堅持している。

 

https://edition.cnn.com/2019/10/04/world/vatican-amazon-synod/index.html