欧米の蒸留酒ジンの製造企業、新型コロナウイルス対策の手洗い消毒液づくりを率先して取り組み。無償等で病院、生活困窮者らに配布。日本の企業も追随してもらいたい（RIEF）
2020-03-21 01:31:41
新型コロナウイルス対策で、世界中でマスクや消毒液不足が深刻化している中で、欧米で蒸留酒のジン製造メーカーが、原料のアルコールを転用して手の消毒液製造に乗り出し、無料で病院や生活困窮者等に配布する動きが広がっている。これが本当のCSRであり、ESG活動だ。日本の酒造メーカーも追随してもらいたい。
（写真は、ジンのボトル。アルコールを転用した消毒液は飲めません）
ロイターによると、英国でも、コロナウイルス感染の広がりとともに、マスクと消毒液がドラッグストア等から消え、ネットで高値で売り出される事態が起きている。お金の無い人ほど、手に入らない状況だ。
この事態に、英国内の各域に点在する多くの小規模なジン蒸留所が立ち上がった。地域で愛されてきたこれらの蒸留所にはジンの製造用のアルコールがある。それを活用し、ジンを作る代わりに、「手の消毒液」の緊急生産に乗り出した。世界保健機関（WHO）の推奨する方法に沿って、純度の高いアルコールをグリセロールと過酸化水素とを混ぜることで消毒液を製造できる。
同製造については、英国政府のアルコール税等を徴収する歳入関税庁（HMRC）も18日、急遽、アルコール転用を迅速に許可する方針を打ち出した。
すでに英イングランド西部のある蒸留所では、100mlボトルに手洗い用の消毒液を詰めて販売し、売り上げをすべて病院等に寄付する活動を始めている。同じイングランド中央部の他の蒸留所でも、製造した消毒液を、高齢者や健康上の課題を抱えている人々に優先的に寄付している。
前者の会社のLiam Hirt氏は「困窮者に使ってもらいたい。買いだめや価格引き上げに対抗するわれわれのやり方だ。この危機で儲けるようなことはしたくない」と強調している。同社は一週間で1000ポンド（約1200㌦）の「売上」をブリストル子ども病院に寄付した。
スコットランドの独立系蒸留所のBrewDogは、「Punk Sanitiser（パンク・サニタイザー）」と名付けた消毒液を蒸留所に並べた。同社の創業者James Watt氏は「この困難な時に、みんなを助けたいんだ。これは売り物じゃない。必要とする人に差し上げるんだよ」と述べている。
英国だけではない。オーストラリアのクリケット選手、Shane Warne氏は、自らが経営する「SevenZeroEight」ブランドのジン蒸留所でのジン製造を中断し、消毒液製造に切り替えた。製造した消毒液は、病院に寄付すると発表した。Warne氏は「今は、オーストラリア人にとってチャレンジングな時だ。この病気と闘うヘルスケアシステムを支え、人々の命を救うために、われわれはできることをすべてやる」と訴えている。
米国でもシカゴのKoval Distillery が消毒液製造に乗り出している。「医療コミュニティや、引退者の老人ホーム、コロナウイルスに正面から取り組んでいる人々に提供する」と宣言した。スウェーデンのストックホルム大学所属の化学者たちも、消毒液づくりを始めた。こちらは、大学で使うエタノールを原料として製造するという。
このほか、先に、フランスの高級ブランドグループ「モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン」（LVMH）も消毒液を、傘下の香水・化粧品ブランド工場で製造し、病院等へ無料で提供すると発表している。http://rief-jp.org/ct12/100268
日本でもアルコールやエタノールを業務に使う企業は少なくないはずだ。政府は「近くマスクは市場に普及する」とかなり前から宣言しているが、今もって薬局等から「マスク入荷の予定はありません」の注意書きが取り除かれる状況にない。消毒液も同様で、薬局から消えて久しい。
しかし、マスクも紙製造業や衣料品業などで代替生産ができるはずだ。欧米企業に倣って、消毒液製造を宣言するアルコール飲料会社や、マスク製造を約束する企業が一社でも多く名乗りをあげてほしい。政府は、大層な専門家会議や、対策宣言ばかりを繰り返すのではなく、企業の代替品製造活動をし易いように規制を緩和し、それらの企業を支援すべきだ。
Research Institute for Environmental Finance