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米国原子炉メーカーの圧力で消えた原発事故時のメーカー責任。原発賠償法を改正すべき(Greenpeace)

2015-10-13 16:15:14

Greenpeaceキャプチャ

先日、安倍晋三首相は、四国電力伊方原発3号機について「(再稼働後に)万が一事故があった場合は政府が責任をもって対処する」と述べた。

民間企業の事業において、事故があった場合に政府が責任を負うというのは、納税者である国民全体が責任を負うと言っているようなものだ。全員の責任は全員の無責任につながる。

原発を運転して利益を得る電力事業者や原子炉メーカーが本来追うべき責任を負わなければ、安全対策への動機が薄れていくことは間違いない。

 

莫大な損害賠償

東京電力福島第一原発事故から4年以上が経過したが、現在、未だに12万人が避難生活を続けている。原発事故による損害賠償はすでに支払われただけで2015年8月現在で5兆円を超えた。請求の内訳は個人が約71万件(2兆3131億円)、自主的避難者約129万件(3535億円)、法人・個人事業主約30万件(2兆3889億円)で、これには行政による除染やその処分、従事した公務員の人件費などは含まれていない。実質の損害額は、それ以上である。

 

政府は、また事故が起きた場合に、同様の負担を国民に課すのだろうか?

 

国が高額の保険を引き受け、その利益を民間企業が得る。この不合理な現実こそが安全神話を生み出したのではないだろうか?

 

それでは、安倍首相の「政府が責任をとる」発言の根拠は何なのか。

 

最悪な原賠法

それは原発事故の賠償責任を定めている「原子力損害の賠償に関する法律」(以後、原賠法)である。この原賠法が、最悪の法律なのだ。

 

原賠法の目的(第1条)は、目下、「被害者の保護」と「原子力事業の健全な発達」の相容れない二つが並立しているが、後者の目的によって、前者の目的が著しく阻害され、この法律のもとではほぼ機能していない。後者を削除し、被害者本位の制度とすべきだ。

 

また、原賠法では、責任が原子力事業者(電力会社)に集中し、原子力事業者が責任を負えなくなると国が救済することになっている。これでは、原子力事業において利益を得ている原子炉メーカーなどはただ儲けである。

 

原発事故の負担が電気料金や税負担に偏ることがないよう、原子力事業者への責任集中の原則を止めるべきだ。そして、原子炉メーカーをはじめ、原子力発電に関わる計画、設計、建設、設備・燃料・資材供給、運転などに関わる数々の企業の事故の原因に責任のある者から先に賠償責任を負うべきである。

 

米国の原子炉メーカーの圧力で消えたメーカー責任

そもそも、このような最悪の法律が成立した経緯はどうだったのか。グリーンピースは、この原賠法の成立の過程を、情報公開法を利用し過去の行政文書などを発掘してレポートにまとめた。このレポートを読めば、原子力村に免責を与えた法律制定の背景に米国の原子炉メーカーの圧力などがあったことがわかる。

 

グリーンピース・レポート「原発にもメーカー責任をーー 原⼦⼒損害賠償体制のあるべき姿とは」

被害者保護の重視や原子炉メーカーが責任を追求される原賠法があれば、そもそも原発事業はリスクが多すぎて通常の企業では参画できない事業であることは明白だ。つまり、原発事業は被害者を犠牲にするという理不尽な形態でのみ可能となった事業なのだ。

 

政府は、相変わらず原発の再稼働を目指している。原発の再稼働を認めることは、このような理不尽な法律の存在を認めることにもなる。

 

原発をなくし、原賠法など必要のない社会を作るのが根本的な解決であることは間違いない。

http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/blog/dblog/blog/54331/