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福島県 県内の帰還困難区域での営林活動当面見送り 放射性物質の濃度下がらず。森林除染も棚上げ(福島民報)。福島の森は「死んでいく」

2015-11-04 22:37:44

fukushimashinrinキャプチャ

福島県は2日、東京電力福島第一原発事故により年間被ばく線量が50ミリシーベルトを超える帰還困難区域の営林活動を当面見合わせる方針を固め、林野庁に伝えた。

 国による区域内での森林除染が棚上げになってきたため、放射性物質が付着した落葉や表土の流出防止などを優先して実施するよう求めた。

 同日、県の小野和彦農林水産部長が同庁を訪れ、今井敏長官と懇談した。冒頭を除き非公開で、県によると、小野部長は方針を転換し、同区域での営林活動を当分見合わせることなどを説明した。今井長官から具体的な回答はなかったという。

 

 帰還困難区域の約8割を森林が占め、面積は約2万6000ヘクタールに上る。原発事故による放射性物質の影響で木材生産などの営林活動は行えず、森林の荒廃が進んでいる。

 

 県は関係市町村や森林組合と協議を重ね、空間放射線量の推移などから同区域内での営林活動の再開は当面難しいと判断。森林全体の除染を求める従来の考えを転換し、同庁に対し、森林のふちや谷間に木の柵や土のうを設置したり、土や木材チップを敷き詰めたりする表土流出防止などの追加対策を優先するように求めた。

 

 ただ、同区域の林縁の総延長は約130キロにも上り、効率的な流出防止策を確立する必要がある。さらに、作業員の被ばく対策マニュアルを策定するなどの課題も残されており、現段階で同庁がどの程度応じるかは不透明だ。

 

 帰還困難区域の森林内の空間放射線量は昨年11月現在、平均で毎時6.5マイクロシーベルト、最大31マイクロシーベルト。県の推計では、放射性物質の自然減衰を加味しても10年後は平均2.6マイクロシーベルト、最大12マイクロシーベルトにとどまる。

 

 県と関係市町村、森林組合などは森林除染や中長期的な森林管理の方針を示すよう求めていたが、国は応じていない。

 

 県は「将来的な住民帰還や営農再開を見据え、森林再生に向けてできることから取り組みたい」としている。


■解説 荒廃防止へ方針転換

 県が示した帰還困難区域での営林活動の当面見送りは、こう着状態にある国との交渉を前進させ、これ以上の森林荒廃を防ぐ狙いがある。

 


 国側は原発事故直後から森林の全面的な除染に消極的だった。面積が広大な上、巨額の予算が必要になるためとみられている。県は再三にわたり交渉してきたが、この間、営林活動ができず経営悪化に陥った森林組合が出ていた。小野和彦部長は「このまま森林全体の除染を求めていても良い結果は得られない」と方針転換に踏み切った意義を強調する。

 


 ただ、関係者の反応は複雑だ。帰還困難区域がある双葉郡の林業者は「事実上の森林除染の断念ではないか」と指摘する。放射性物質を含んだ表土の流出防止対策などを施した後に表土を剥ぐ除染の実施は見込めないためだという。

 


 一方、県森林組合連合会の秋元公夫会長は「本来は除染が望ましいが、このまま放置すれば山は死ぬ。県は苦渋の決断をした」と一定の理解を示した。

 


 国には避難区域の森林再生に向け、早急な方針策定が求められている。

 

http://www.minpo.jp/news/detail/2015110326441